F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

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効率的に見える大きな勘違い

世の中ヘン。何かをやらせることが平気になっている。

とあるメーカーからのお知らせメールがきた。詳しくはこちら、というURLをクリックしたら、最初にこんなページが出てきた。

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配信内容の変更を承ります。
現在、当サイトからのメールを受信しているアドレスを記入して、
配信を希望される項目にチェックを入れてください。
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“広報部からの案内を、より効率的に”と考えたのだろう。しかし、どこかおかしい。

受け手(ここでは、案内を受け取る我々メディア関係者)に作業を強いているからだ。いや、必要ならば作業は厭わない。けれど、ここが最近、いろいろな場面で遭遇するこの手の案内や思考回路のほころびに感じるところだ。目的が“情報をユーザーに届ける”という本来のものではなく別のことになっている。


広報部からのお知らせであるプレスリリースは、メディアを通して製品や計画を告知するために存在する。その告知は、言うまでもなくメディアではなく、その先にいるユーザーに届けたい。メディアを使って拡散するのがそもそもの存在意義。つまり、情報は、クライアント→代理店(もしくは担当部署)→メディア→ユーザーという道をたどって伝わる。

上の流れを具体化すると、クリックしたURLのクライアントは自動車メーカーであり、代理店(もしくは担当者)がまとめた情報が【STINGER】に届き、【STINGER】の作業を経てサイトに掲載されてユーザーの目に止まるのだが、【STINGER】の段階は、できる限りスムーズに流れた方がいい。

にも関わらず、そこに“作業”を強いているのは、効率的にどうなの?ということだ。たとえば、こんな側面もある。


リリースが届く。書かれている内容を記事にする場合、写真が必要だ。リリースに写真のURLなどが入っていれば、比較的簡単に写真を入手できるが、そうでない場合、“写真を探す”という手間が加わる。積極的に使いたい情報ならば話は別だが、興味が希薄な情報の場合、掲載をやめてしまう可能性が高くなる。

メーカー担当者にこうしたことを伝えると、「あ、写真は当社のホームページにありますので探していただければ」と平気で仰る。そういうことじゃなくて、気遣いが足らないってことですぜ。

特にモータースポーツのように、一般媒体から興味を持たれにくいテーマの場合、掲載の可能性はさらに低くなってもったいないってことだ。

リリースが、以下のセットになっていれば、より掲載される確率が高くなる。
1)情報の文章
2)推奨写真数点を届けるURL

しかし、そうなっていない。たいていは、写真を“どこか”に探しに行く必要がある。その“どこか”は手持ちがなければメーカーのサイトになるのだが、専門誌ではない限り、いちいち覚えていないだろう。


ところでなぜこうした形になってしまうのだろうか。それは、クライアントと代理店までの範囲で物事が収束してしまっているからではないかと思う。クライアントから業務依託された代理店が成すべきは、情報をユーザーに届けることだが、代理店が気になるのは、資金が出るクライアントやその担当者。多くがそこしか見えていないことから、上記の様なことが起きる。

つまり、代理店はクライアントに対して、“仰せに従いましてこういうことをやっています”という業務報告をしているだけ。目的が業務を行なっているという報告で終結して、実はその先の“ユーザーに届ける”に進んでいない、ということだ。


最近の新車などの発表会でよく見かける光景にも、それに似た流れを感じることが多い。ここ数年、発表会開始の数分前に、代理店担当者が壇上にあがって、式次第を説明するようになった。

動画撮影のためのカメラのホワイトバランス調整など、確認事項があることは理解できないくもないが、何時何分に社長がどこから出てきてどこに立つとか、その流れを招待客である報道関係者に説明することにどれだけの意味があるのか。意味があるとすれば、クライアント窓口に対して、“これだけのことをやってます”という報告だけだ。

つまり、発表会で伝わるのは、クライアントからの指示が、代理店によってどれだけ具体的に実現できているか、ということだけ。報道関係者に内容を伝え、それが記事になってユーザーに届けるという本来の流れは、二の次だ。


情報が発達して、世の中便利になった。しかし、便利の代償として、外見だけは物事が進んでいるように見えながら、本来なされるべきことがなされていない事態も多くなっている。

翻って、楽しいかどうかより、売れればいいクルマの氾濫は、こんなところに基本的なボタンの掛け違いがあるからかもしれないと思うと、この暑いのに背筋が寒くなる。

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