リキさんのレーシング日本史 マイ・ワンダフル・サーキットⅡ

鈴鹿から世界へ

第107回
日本のフォーミュラカーレース

1974年に夜明けを迎えた日本のフォーミュラカーレース。富士スピードウェイで生まれ、人気を博した富士グランチャンピオンレースの後を受け、レースの基盤になるべきフォーミュラは、日本でどのように成長してきたのか。フォーミュラ・ニッポンへの流れを探る。

----前回は、昨年11月に行なわれた鈴鹿サーキットでのスーパーフォーミュラをご覧になったことを伺いました。

「ええ、エキシビジョンで行なわれた“無人ロボカー”の走りを観て、変化していく未来、というと大げさかな(笑)、そんなことを感じましたね」

----なにしろ、コクピットに誰も乗っていないわけですから、それが主流になるのでしたら、大げさでなく大きな変化がおきるのではないかと思えますが、歴史を振り返りますと、1976年11月に、F2000による日本グランプリが開催されました。

「ええ、しかし、ロボカーは、日本のフォーミュラレースとは無関係で、数年後に世界選手権レースが企画されていて、すでに何チームかがロボカーにF1コースを習熟させて、アブダビだかの中東に本拠地を構えるチームが度々鈴鹿でテストを繰り返していて、スーパーフォーミュラのエキジビションで走らせてみたいということからのデモだったようです」

----なるほど。その2年前の1974年5月に初開催された“全日本選手権鈴鹿フォーミュラレース”から、鈴鹿サーキットがフォーミュラカーに注力してゆき、現在のスーパーフォーミュラにつながるわけですね。

「いや、鈴鹿選手権の延長線上にスーパーーフォーミュラが乗ったのではありません」

----ほう。

「フォーミュラカーの中でも統一性が欠けていることもひとつの原因で、フォーミュラカーレース自体の存在が薄いことから、鈴鹿のフォーミュラカーを盛り上げるのではなく、フォーミュラ全体の向上を、鈴鹿やトムスなど数カ所て工夫した形がスーパーフォーミュラになった、と解釈できるようです」

----そんな中で、無人のF2マシンのコクピットにAI機器を搭載したマシンが競走するアトラクションが披露されたのですね。

「そうです」

----まさに日本のフォーミュラカーの時代が大きく大きく変換しようとしているところですが、そのき裏舞台を裏側からご覧になってきたトムスの舘名誉会長に、日本のフォーミュラカーに同対応していくのか伺いました。

「舘くん、いや“くん”なんて気楽に呼べませんが現場を俯瞰からごらんになっている御立場ですし、ドライバーとしても監督としてもトヨタのレース活動の中心で活躍されていますから、うってつけですね。

----私の思考が及ばなかった視点からの“現状”を伺うことができました。

「ほう、本場との違いとか?」

----仰る通りです。まず、現在スーパーフォーミュラにエンジンを供給しているのはホンダとトヨタですが、どちらも社内の温度差のようなものが存在して、費用の負担が重荷になっている、とわれるバックボーンがありますが、そうした状況から、フォーミュラ・ライツ、 F3といった方がいいかもしれませんが、2024シーズ一杯で消滅消滅するのではないかとの意見もありました。

「しかし、現在主流になっているイタリアのダラーラ製のマシンは、大変優れたモデルとして定評がありますね」

----ええ、ダラーラは作りがしっかりしているのでハンドリングがよく、その F3でスキルを積んでおけば、スーパーフォーミュラやヨーロッパF2のどちらもすんなりと乗れる、という話をよく聞きます。

「そうですね」

----ただ、その分高価という問題があるとも聞きます。そして、日本とヨーロッパのコースの違いが浮き彫りになる、と。

「なるほど。日本のコースは綺麗に創られていて、路面のグリップの高い。ヨーロッパのコースは、言ってみれば粗雑な作りですから」

----なので、日本の路面状態や、それに対応したハイグリップのタイヤという大きな差がベースにあって、日本での経験がヨーロッパのコースにダイレクトには通用しない。その意味で“グリップを落してもいいからスキルを積める”という意見が以前から聞かれています。

「日本はグリップが重要視され、ヨーロッパではハンドリングに重きが置かれる」

----そんななかで、無人のF2マシンのコクピットにAI機器を搭載したロボカーと、ドライバー乗ったマシンが競走するアトラクションが披露されたのですね。

「そうです」

----まさに日本のフォーミュラカーの時代が大きく変換しようとしているところですが、その裏舞台を現場からご覧になってきたトムスの舘名誉会長に、日本のフォーミュラの変化にがどう対応していくのかを伺いました。

「舘くん、いや、くんなんて気軽に呼べませんが(笑)、現場を俯瞰からご覧になっている御立場ですし、ドライバーとしても監督としてもトヨタのレース活動の中心で活躍されていますから、うってつけですね」

----私の考えが及ばなかった視点からの“現状”を伺うことができました。

「ほう、本場との違いとか?」

----仰る通りです。まず、現在スーパーフォーミュラにエンジンを供給しているのは、ホンダとトヨタです。どちらも社内の温度差のようなものから費用の負担が重荷になっているといわれているというバックボーンがありますが、そうした状況から、フォーミュラ・ライツ、いやF3といった方が分かりやすいですが、今年一杯で消滅するのではないかという噂があります。

「しかし、現在主流になっているイタリアのダラーラ製のマシンは大変優れたモデルとして定評がありますね」

----ええ、ダラーラは作りがしっかりしているのでハンドリングがよく、そのF3でスキルを積んでおけば、上のカテゴリー、日本で言えばスーパーフォーミュラ、ヨーロッパで言えばF2ですが、どちらもすんなりと乗れるという声をよく聞きます。

「そうですね」

----ただ、その分高価という問題があるようです。そして、日本のコースとヨーロッパのコースの違いが浮き彫りになる、と。

「なるほど、日本のコースは、綺麗に作っていますから。路面のグリップもいい。ヨーロッパのコースは、言ってしまえば粗雑な作りですから」

----仰る通りで、日本の路面状況や、ハイグリップのタイヤというベースに大きな差があって、日本での経験がヨーロッパのコースに直接は通用しない。その意味で、“グリップを落してもいいからスキルを積める方向に”という意見は前々から聞こえています。

「日本はグリップが重要視され、ヨーロッパではハンドリングに重きが置かれる」

----そういう状況の中で、童夢創始者の林ミノルさんが警鐘を鳴らしている状況も懸念されます。

「国内コンストラクターが育ちようがない、という視点からの意見ですね。一昔前とは違って、小規模とはいえコンストラクターも現れてきている時代ですから、昔の道楽レベルで得た経験談や知識は、参考になりませんが、レース創世記にはみられなかった動きが見え隠れしていますね」

----現状の日本のフォーミュラ・リージョンは、トムス4台とB-MAXが3台、戸田エンジニアリング1台と、あとはジェントルマン・レーサーを合わせて12~13台になっているので、スーパーフォーミュラ・ライツ(F3)は、フォーミュラ・リージョンに統一するのがいいという声もあります。

「2025年のスーパーフォーミュラ開幕戦では、40台の参戦で盛況でしたか、競走女子への応援も熱心なようですから、アルファロメオのパワーヌニットを積む新たなF4シリーズも興味深いでしょう」

----去年は、リアム・ローソンが来日して速いところを見せました。30年ほど前に、その後F1で7回のワールドチャンピオンを獲得するミハエル・シューマッハが来日して、菅生のF3000でいきなりポールポジションから優勝したレースがありました。

「日本のドライバーが走り慣れているはずのコースにパッと来てサクッ勝ってしまった。事情はあったにしても、ピカッと光るものを感じました」

----そうした流れで今日の日本のフォーミュラが華開くわけですが、現在、元童夢のデザインを牽引していた奥デザイナーが代表の東レ・カーボンマジックと童夢が、和製マシンを検討中という噂もありますが、そうなると台数が2~3台増えますが、トムスが豊田章男代表取締役会長の協力を得てジュニアチームを作る動きを見せているという話もあるようです。

「ほう、モリゾウさんと舘さんの若手育成は楽しみですね」

----取らぬタヌキですが、再びトヨタがF1に近づいていると思うと、ワクワクします。ローソンの来日などは、その流れを先取りしているのではないかと勝手な解釈をしたくなります(笑)。ホンダとトヨタのパワートレーンのマシンに乗るために、“日本経由”の道が開けるわけですから、当然、日本人ドライバーにもチャンスがでるのではないかと、夢想したくなります。

「そうですか、ジュジュ選手(野田樹潤)も含めて、楽しみが増えますね」

----問題は、スーパーフォーミュラもF2も、シーズンを闘うためには数億億円かかるというコストの問題のようです。間違いなく、スーパーフォーミュラの注目度は高まっているので、それをクリアーできることに期待したいものです。


第百七回・了(取材・文:STINGER編集部)

制作:STINGER編集部
mys@f1-stinger.com


書籍カバー
【新刊のご案内】

力さんの新刊、絶賛発売中。

『無我夢走』(三栄書房)

高度成長で自動車産業が花開き、日本のレースが本格始動した1960年代中盤からのまさしく無我夢走を伝える必読の書。

詳細はこちら。
http://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=9097