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田辺豊治新テクニカルディレクターに訊く 準備はいかがですか?

今年から現場を預かる田辺豊治ホンダF1テクニカルディレクター。F1だけでなく、CARTやインディカーの豊富な経験を持つ。生粋のレースフリークでもある。

1月1日付けで、2016年と2017年を担当した長谷川祐介F1プロジェクト総責任者に代わって、田辺豊治テクニカルディレクターがF1の現場責任者に就任した。

ホンダはこれまで、新井康久開発責任者を2015年、長谷川祐介F1プロジェクト総責任者に2016年と2017年を全体責任者の位置づけとしていたが、今年は、体制を一新、開発と現場を分離して、より緻密な対応ができるような体制に変更した。

開発は、開発はHRD Sakuraの浅木泰昭執行役員が指揮を執る。浅木執行役員は、Hondaに入社間もない1982年から5年間、F1エンジンのテストに従事し、その後、量産エンジンの開発や、初代N-BOXの開発責任者を務め、2013年に研究所の執行役員となり、2017年にHRD Sakuraの研究領域統括に就任し、今年からHRD Sakuraの研究開発全体を統括している。

田辺テクニカルディレクターは、1983年から1992年の第二期でゲルハルト・ベルガーのエンジニアとして活躍、その後第三期には、ジェンソン・バトンのエンジニアを務めた後、アメリカに渡ってインディカーのエンジンを担当、2017年のインディ500に優勝した佐藤琢磨をサポートしたのは記憶に新しい。今後、浅川執行役員と密接に連携して、F1の現場の総指揮を執る。

就任間もない2月、新車発表まで10日と迫ったところで、福島県のホンダ・サクラ研究所と、イタリア・ファエンツェのミナルディのファクトリーを行き来して準備に余念のない田辺TDに訊いた。

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山口正己(以下、山口):田辺さん、ごぶさたしています。
田辺豊治(以下、田辺):ごぶさたです。

山口:F1に戻られて準備にお忙しいと思います。就任されたのが1月ですが、就任以降は、日本とイタリアのトロロッソの間を移動して大変だったと思いますが。
田辺:トロロッソファクトリーを何度か訪れて、パワーユニット搭載や年間計画に関するテクニカルミーティング、またレース・テスト運営に関しての詳細準備を進めています。同時に、HRDのSakuraとオフシーズンの開発状況をビデオ会議などで頻繁に共有し、オフシーズンバルセロナテストに向けての準備に追われています。

山口:トロロッソの前身は、田辺さんが第二期時代のミナルディです。正直なところ、今はトップチームではありませんが、極めて家族的でモーターレーシングの神髄を深く理解したチームでしたが、田辺さんの当時のミナルディにどんなイメージをお持ちだったでしょうか。
田辺:1980年後半から1990年序盤にかけのホンダF1第二期時代、記憶に残っているミナルディチームの思い出があります。どのレースかは忘れてしまったのですが、我々はその日も優勝して、食事会、いわゆる祝勝会になりますが、そのレストランでミナルディのチームメンバーと偶然一緒になったのです。

山口:ホンダの祝勝会には、第二期時代に総監督と自ら名乗っていらした桜井淑敏さんのお声がけで、我々もよく呼んでいただきました。
田辺:それです(笑)。

山口:そこでミナルディご一行に会ったわけですね。
田辺:ミナルディのメンバーが全員とても楽しそうに、飲んで食べて歌い踊っていました。当時、勝つこと勝ち続けることだけに必死だった私にとって、負けたのに何故あのように楽しく出来るのだろうという疑問と共に、F1に参戦することを皆であんなに楽しめるなんて、なんて羨ましいことだろうと思ったのを思い出しました。

山口:確かに、ミナルディはそういうチームでした。
田辺:その後、出張日数制限の関係で、業務を休まなければならなかった第三期の1991年に、ハンガリーGPをプライベートで見物した折に、ミナルディのホスピタリティに連れて行っていただいて感動のミナルディ飯をいただきました。奇しくも、本田宗一郎氏の弔いレースでもあったのですが、パスタが噂通り美味しかったです(笑)。

清楚なF1らしいトロロッソのオフィス。

山口:そうした思い出がありつつ訪れたトロロッソは、どんな印象だったですか?
田辺:適度なサイズのファクトリーで人々が活き活きと仕事をしていたのが印象的でした。

山口:適度なサイズとは?
田辺:具体的には難しいですが、広過ぎず狭過ぎず、少々密度が高いかな?:と思う広さの中で人々が作業していました。

山口:トロロッソの本拠地であるファエンツァの地理的状況とか、食事などは、いまでも“伝統”通りでしたか?
田辺:我々のイギリスのUKオフィスからは当然ながら少々距離がありますが、ボローニャ空港から近く、便利なところです。オフィスで美味しいイタリアンの昼食を頂きましたが、残念ながら街のレストランで食事をする機会はまだありません。

山口:ミナルディ時代から、アイルトン・セナがパスタを食べに来たとか、エスプレッソが美味しいと評判でしたが、それは置いておくとして(笑)、闘いの基地としては、どんな印象でしたか?
田辺:先ほども申しましたが、ファクトリーに各セクションが効率よく配置されており、少々窮屈目に見えるものの人々が無駄なく有機的に作業しているのが感じられました。きっと、良い物が創り出されるなと感じられました。
その2につづく)

インタビュー/まとめ[STINGER]山口正己
photo by HONA / TORPROSSO

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