バッテリーとドライバビリティがKERSの課題!!
開幕戦では、少なくとも”大活躍”ができなかったKERS。回生エネルギーリカバリーシステムの今後はいかに。
◆「重量」が最大の課題
最大の問題は、規則で許されるKERSの優位を完全にクリアーするとなると、バッテリーが大型になってしまうことだ。大きいイコール重い。重量はF1の敵だが、とあるバッテリー・メーカーは、「今後2年は、要求に足りる軽量なバッテリーは登場しない」と断言した。
トヨタのエンジニアは、「現在のバッテリーで要求を満たそうとすると、KERSシステム全体でざっと60Kg近い重量増になってしまう」と証言している。「しかし、”我慢”をすれば、有効活用も可能」とも。
“我慢”とは、「例えば毎周使うのではなく、1周置きにするとか」。しかし、それでも、重量は、「30Kgでは済まず、40Kg近くになる」。
また、KERSのもうひとつの問題が冷却だ。冷却は、オイルと水を組み合わせる。回生で大量の熱を持つバッテリーをオイルで冷やし、モーターは水冷。オイルの方が沸点が高く、気温との落差の大きさで冷却効率を上げられるから、負荷の高いバッテリーの冷却はオイルに頼るのだ。
◆安定した「ドライバビリティ」
さらに、KERSの難易度を高くしているのがドライバビリティだ。KERSシステムを使うと、ブレーキングのコントロールが難しくなる。普通のブレーキにKERSの負荷が加わることで、「エンジンブレーキが倍効きになる」から。トヨタがプリウスで発売後まで苦心したのがそこだった。
プリウスは、長野オリンピックのオフィシャルカーとして承認されるために発売を早めたといわれるが、初期型のブレーキは、まるで壊れていると思うほどの”カックン・ブレーキ”だった。その後改良が重ねられ、2代目でその問題はクリアーしたが、それをF1のレベルで安定させるのは簡単ではない。
トヨタのエンジニアは、そこを解決して参戦したフェラーリを「さすがですね」と言った。KERSをF1レベルのドライバビリティに仕上げている”シャシー”のノウハウに思わず唸ったのだ。
しかし、逆も考えられるかもしれない。市販車とF1は、テクノロジーレベルが違うとは言え、トヨタはプリウスでハイブリッドの苦労を知っている。F1用は難易度がさらに高いことを察知して、だから慎重になって投入を見合わせている?