GPホットライン 09-02 マレーシアGP
予定どおり(?)の激しいシャワーで、マレーシアGPは大混乱。しかし、そのレースでもブロウンが強かった。クルマ好きのエディター・羽端恭一さんと、スティンガー編集長が裏舞台をズバリ診断する。
◆それでもレースは成立する
羽端 今回のマレーシア・グランプリは、サッカーでいうなら、前半戦も終わってないところで、何かのアクシデントがあって終了という感じ。
STINGER-山口(以下[STG])だから、リザルトに関しては、何ともいえない。コメント、なし!(笑)。
羽端 ……というか、こんな状況で「リザルト」になる、というのが、逆にちょっとフシギだったりする(笑)。
[STG] でも、ちゃんと得点も半分になるので(笑)。
羽端 あ、そうか。
[STG] 優勝は5点、以下、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.5になります。
羽端 0.5というのもF1ぽくなくて奇妙だけど(笑)。ところで、レースは31周で終わったというか「成立」、というけど、ピットストップのタイミング、その巧拙にしても、それからタイヤの選択とか、そういうのが全~部、さぁこれから!……という時に、シャワーがドシャッときて、赤旗中断ですよね。
[STG] まぁ、巧拙とか、タイミングは、時には”当たり外れ”と言った方がいい場合もありますけど(笑)。
羽端 ははは(笑)。でも、一貴にしても、燃料をいっぱい積んで、最初をロング・スティントにするという作戦だったはずで?
[STG] ……ですね。そうした方向が始まったころに雨がきてオシマイ。こういう終わり方は不完全燃焼だったですね。しかし、いろいろドタバタとあったとはいえ、速いマシンが勝ちました。
◆ここでも速かったブロウン!?
羽端 ブロウンね、やっぱり速いですね。ポールも取っていたし、レースでもリーダーだった。そして、バトンだけじゃなく、バリチェロも同じように速かった。
[STG] 今回は、雨なので、なんともいえないけれど、結果は結果ですから。
羽端 というと?
[STG] ブロウンGPは、シーズンオフにテスト時間が少なかったので、ロングランの走り込みが出来ていない。
羽端 はいはい、それは聞いていたので、だから雨の件もね。雨が降ったら、他のチーム、たとえばトヨタとか、テストをちゃんと重ねてきたチームには、ブロウンはかなわないのでは……と思っていた。でも、雨でも、ブロウンはポジションは失わなかった。
[STG] 確かに。でも、今回は雨で途中で終わっているし。開幕戦では、追い上げてきていたベッテル+トロ・ロッソとクビサ+BMWザウバーが接触してクルマを壊していなければ、どうなった分からない、という意見もあるんです。
羽端 なるほど。それはそうかもしれない。
[STG] とはいえ、速いマシンであることに変わりはないですけど。
羽端 ドライのレースで長く走ってどうかは、今後のお楽しみ? あと、いま指摘されて気づいたけど、ブロウンって、ものすごく「恵まれて」いるような! というのは、そのベッテルとクビサの件もそうだし、今回の雨も、ブロウンを勝たせた。まあ、運も実力のうちでしょうけど。
[STG] ……ですね。シーズン開始からしばらくは、こうして勝手な憶測ができるのが楽しいわけですから(笑)。
◆ブロウンGPを速くしたのは誰?
羽端 ところで、いま一番興味があるのは、ブロウンの「速さ」をつくったのは、「ロス(ブロウン・チーム代表)」なのか、それとも「ホンダ」なのか、ということ。09年の新レギュレーションに向けて、栃木研究所あたりで活発に動いていた日本人エンジニアというのは、きっといるはず。
[STG] それは否定しないし、去年までチームの責任者だった中本修平さんも、去年の11月の段階で、「09年のクルマはいいですよ」といってましたから。
羽端 でもロスは、もし訊かれても、絶対に「これは俺のジョブだ」というだろうな!(笑)
[STG] いや、彼は、案外シャイな人柄なので、そういうことは言わないと思います。それを言うとしたら、CEOに居座っているニック・フライじゃないかな。何せ、去年の日本GPの直前に、ホンダの青山本社で開かれた会見で、「”我々のチーム”には、ホンダという強力なバックアップがある」と平気で言ったお方ですから。オイオイ、ホンダF1チームは、アナタのチームじゃなくて、ホンダのチームでしょ?と――。しかし、それに対して、ホンダの方は誰も反応しなかったのにも驚きましたけど。
羽端 おお、そんなことがあったんですね。
[STG] でも、その一方で、琢磨が乗っていた時(ホンダの前身のBAR)のエンジニアのジョック・クレアは、「メルボルンの優勝の後、ものすごくたくさんのホンダ・マンからメールがきてとても嬉しかった」と言ってました。
羽端 それはちょっと、いい話ですね。
[STG] でも、ホンダ・マンと一緒にやっていたら勝てたかどうかは分からない、という意見もありますね。日本の会社は、サラリーマンの立場がどうしても絡んできてしまう。ブロウンGPがホンダから変身した瞬間に速くなったのは、その呪縛を解かれた、というのが効いている気がします。
羽端 エンジンが、ホンダからメルセデスに変わったからではなく?
[STG] ほぼ関係ない、と言っていいでしょうね。エンジンで速くなる、というほどF1というか、クルマは簡単じゃない、というか。