GPホットライン 09-07 トルコ(パート-2)
ポールポジションからスタートしたフェッテル+レッドブルに期待がかかったが、終わってみたら表彰台最上段にはブロウンのバトンが登っていた。クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとスティンガー編集長が、トルコGPの裏舞台をズバリ診断する。
◆三強ではなくて・・・!?
羽端恭一(以下、羽端) ところで、「三強」ではなくて、実際は「二強」で、さらにいうなら「1.5強」くらいなのでは?
[STINGER 山口正己](以下STG) もう少し冷静いえば、”一強とその他”(笑)。
羽端 そうか!(笑)ブロウンGPはそれだけ圧倒的、と――。で、残念ながらそこから外れちゃったところについては、いずれ書くとして、ブロウンとレッドブルの「差」というのは、やっぱり、浜島さんがおっしゃるように、タイヤの使い方なんでしょうかね?
[STG] それが基本で、簡単にいえば、”メカニカルグリップ”と空力の”エアログリップ”のバランスだと思います。まぁ、部外者の勝手な意見ですけど(笑)。レッドブルのテクニカル・ディレクターエイドリアン・ニューウェイは、空力の専門家ですから。
羽端 あー、そうか。”空力マシン”を一生懸命つくっているということでは、それはトヨタにもいえること?
[STG] ……と思います。というか、特にトヨタはそこにつかまっていると思う。
羽端 なるほどねえ! じゃ、こういうのは? レッドブルは、タイヤを”傷つける”までにトラクションがかかっているのだとすれば、その特性というか”悪性”かな?(笑)、それを利用して、逆に、レッドブルが上位に来られるようなサーキットというのは、ないのか?
[STG] ない。
羽端 おお、断言しましたね。でも、基本的なところでのクルマの”デキ”というのは、そういうことなんだ。
[STG] でも、雨が降ったすると、勢力図が変わる可能性はある……かな?(笑)
雨に強いレッドブル。
羽端 そうでしょ、「雨」はよさそう、レッドブルには!
[STG] しかし、それは、単に”不確定要素が増えた”というだけのことであって、実際のマシン・ポテンシャルとは実は無関係だったりする。
羽端 あと、トヨタの新居さんがご指摘のように、「ブロウンとそれ以外」という風に見た場合に、開幕時より、その差が少しずつ縮まっている?
[STG] それはいえます。ただね、ブロウンGPは、他チーム以上に、今年のシーズンの”見切り”が明確にできていた。
羽端 ”見切り”……。一貴選手がよくいう、「できることと、できないこと」にもつながるのかな?
[STG] ……ですね。マシン開発にかかるときに、ライバルの力を読んで我がマシンの水準を決める、というのは、実はかなり重要なポイントになるので。
羽端 ロス・ブロウンはそれがとても上手である、と――。そして、もしH社が絡んでいたら、そういう”見切り”はできなかったかもしれない?
[STG] そういうことだと思います。シーズン全部を見通した”作戦エンジニアリング”が完璧だった、ということですね。
羽端 それでね、今日一番聞きたかったのは、こういう風に(7戦6勝)、「一強」だけが前半に”走っちゃった”場合、シーズンが中盤から後半になっても、そういう状況は、もう変わりようがないのか? それとも、強力なチャレンジャーが、どこからか浮上することがあるのか?
[STG] 個人的には変化してほしいと思っていますが、なんとも……。
羽端 ……あ、やっぱり!
[STG] でも、通常なら「安定」を求めたチームは、序盤はいいけど、途中からトーンダウンするはず。もっと上のポテンシャルを”見切った”チームが伸びてきて、当初の威力を失うはずなんだけれど、今年はそれがいまのことろ、ないですから。
羽端 それは、フェラーリとか KERS とか?
[STG] ……です。フェラーリはそこそこ来ているけれど、マクラーレンは、トルコGPでハミルトンが、「今の辛さは来年に役立つ」と、いわば今年に対する白旗宣言をしちゃった。
すでにあきらめモードのディフェンティング・チャンピオン。
羽端 過去に、こういう例はあった?
[STG] 似ている例でいうと、1988年のマクラーレン・ホンダの16戦15勝というのがありますね。でも、そのときは、ホンダのターボが圧倒的だった、という誰にもわかりやすい理由がありました。
羽端 いまは、なぜ速いかの理由が、そのときほどには見えない。
[STG] 見えたら、全チームがそれをやってます(笑)。でも、レースはわからない。今回のトルコGPで最も印象的だったのは、ゴール後にバトンの無線に、”アンビリーバブル!”という言葉が聞こえたこと。
羽端 楽勝に見えて、実は違った。
[STG] そういうことだと思います。
羽端 期待ということでいえば、フェッテルにいきなり3連勝くらいしてもらって、それにウェーバーがついていって、ドライバーでもコンストラクターでも、ハッキリ「二強」になって、秋の鈴鹿になだれ込む……というのが、私の願いです。
[STG] もう少しいうと、三強になって、3番目がトヨタ(笑)。
羽端 「3番目」ということでは、いまでもしっかり第3位なんですよ。ただし、離れてますが(笑)。
[STG] 無い物ねだりかな。ついでにいえば、そこに中嶋がからんできてほしいですね。一貴は、そうとうにいいところにきてますからね。あとは結果が付いてくれば、ポンポンと行くはずです。