新春特別企画/ホットライン特別編・激動の2009から期待の2010へ(1/3)
あっという間に2009年シーズンが終り、新しい年がやってきた。2010年シーズンを楽しく迎えるために、2009年を振り返っておきたい。クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとスティンガー編集長が、2009-2010のF1GP裏舞台をズバリ診断する。
◆1/3・・・やっぱり「2009年」は激動の年だった!
羽端恭一(以下羽端) 2009F1GPが終わりましたが、この「2009年」というのは、F1にとっては”激動の年”といっていいんですかね? それとも、このくらいの”事件”は、F1ソサエティでは毎年起きている……と、そんな風に捉えるべきなのか?
STINGER編集長山口正己(以下[STINGER]) 確かに今年は”特別”だったと思います。歴史的に振り返る場合、いくつか区切りになる年がありますが、2009年は、そのひとつに数えられると思います。
羽端 なるほど、やっぱりそうですか。この点については、私は、この年は「多くのメーカーが手を引いた」年になった、というように捉えたいです。メルセデスを除いて、ですけどね。
[[STINGER]] メーカーがやめるというのはここ数年の流れだったけれど、2009年は中でも印象的な年でしたね。
羽端 この場合のメーカーというのは、F1やモータースポーツ以外に「ジョブ」を持っている会社ということ。だから、その意味ではフェラーリは「メーカー」じゃないというのが、私の定義ですが?
[STINGER] 確かに(笑)。フェラーリは、宣伝のためにF1をやっているんじゃなくて、F1をやる資金を稼ぐためにクルマを売っているという半ばジョークのような“真実”があるくらいですから。
羽端 おお、なるほど。それって、まったくジョークには聞こえないですね(笑)。
[STINGER] 半分以上ホントのことだと思います。
フェラーリだけは特別!?
羽端 会社としての「ジョブ」のなかにF1が入っているというか、F1みたいなクルマ(市販車)をつくってる特殊な会社というか……。いわゆる量販車はやってない、非常にレアな「メーカー」ですよね。ベンツもBMWもルノーも、そしてホンダもトヨタも、スポーティなクルマは確かに作ってるけど、そのほかにセダンやミニバンもつくってるわけで。
[STINGER] 確かにそれはひとつの括り方ですけど、『自動車メーカー』をもう少し乱暴に区分けすると、「ミニバンを作っているかどうか」という視点もあるかも。
羽端 というと?
[STINGER] フェラーリもポルシェもミニバンは作っていない。要するに、”いいクルマ=売れるクルマ”という思考回路ではない、というようなことです。メルセデスのAクラスがミニバンのハシリだ、という見方もありますが、BMWもミニバンで生計を立ててる会社ではないですね。
羽端 ははあ、編集長はミニバンがお嫌いで?(笑)。ただ、このへんになるとけっこう微妙な部分があって、アメリカ市場で「SUV」(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)と分類されるようなモデルは、ポルシェ(カイエン)もメルセデスもBMWも、またVWもアウディもトヨタもつくってる。そして、このジャンルは、近年「クロスオーバー」化の傾向をさらに強めていて、セダンやバンに接近している。
[STINGER] ミニバンを否定しているのではないんです。ニミバンは、”運転が楽しくて、家族も乗れて、荷物も積める”、というのが魅力ですよね。でも、本来はと3台必要なクルマを1台で済ませちゃう、という思考でミニバン一辺倒になっちゃっていいの?みたいな(笑)。確かに商売は大事だけれど、基本的に”クルマとは何か”みたいな思想が、最近の自動車メーカーには希薄なような。
羽端 でも、「総合カー・メーカー」という立場を採ろうとするなら、いろんなクルマをつくらないとね。
[STINGER] 極端な話、マクラーレンは、ごく少数生産ながらロードカーも作っているけれど、マクラーレンのミニバンは出ない(笑)。まぁ、出たらそれはそれでウケルかもしれませんけど(笑)。要するに、フェラーリもマクラーレンと同じで、生産車の方向性からして、主体が”レーシング”にあるわけです。
羽端 まあ、それはともかく、こうした「総合メーカー」という会社のモータースポーツに対する関わり方は、ある時期に、何らかの理由でスポーツに関わって、ある時期に、何らかの理由で、参加していたフィールドから去る。歴史的には、この繰り返しでしょ。
[STINGER] まぁ。都合といえばそう言えるかもしれないですね。
羽端 たとえば「ル・マン」でいえば、近年はずっとアウディが勝つレースになっていて、……というか、そういう状況をアウディが巧くつくった。まあ昨年あたりから、でしたっけ? そこへプジョーが絡んできましたけど。
[STINGER] う〜ん、マクロ的というか短期的に見ればその通りですけど、ル・マンの歴史は、メルセデスであり、ジャガーであり、フェラーリであり、フォードであり、ルノーであり、ポルシェであり、プジョーであり、そして、その後にアウディですから。しかし、”巧く作った”という見方は正しいと思います。上に挙げたメーカーは、どれも、”まずは場を高めて、そこで勝つ”という構造の中でル・マンを捉えていると思います。日本のメーカーの場合、単に「勝つこと」だけに集中しすぎるというか。結果はそれでいいけれど、大切なのは”場を作ることに貢献する”という姿勢と思います。
羽端 そのような”場つくり”ということでは、たしかにニッサンとトヨタは、あまり上手じゃなかったかな(笑)。