F1ドライバー 小林可夢偉 2010年 初春トーク 7/9
◆「アブダビ」での覚悟は気合いを入れないことだった!?
[STG] なるほど。ところで、ブラジルGPでは、ティモのクルマを預かってるという感じだったと思うけれど、最終戦のアブダビGPでは、”自分のクルマ”という感覚で、心構えが違った?
可夢偉 アブダビは、最後（のチャンス）かなと。ここでダメだったら──。
[STG] となると普通は、緊張して力が入って失敗しやすいはずだけれど、非常にうまくいった感じましたが。
可夢偉 基本的に、大事なときに気合で行くのはやめようと。気合っていうのは失敗のもとだから。気合っていうのは、たぶん失敗する気合のことなんじゃないかなぁと。
[STG] ふ〜む。それはいつごろ悟ったんですか?
可夢偉 結構最近です。去年ですね。GP2の1戦目の上海ぐらいです。トップ走ってていきなり飛び出して2位になったとき。あの時ごろです。
[STG] なるほど。ということは、その失敗が後から考えるとすべてがいい方につながってる?
可夢偉 つながってますね。まぁ、そういう部分では。ただ、ぼくらは結果を出さないと生き残れないのが現実なので。
[STG] 落ち着いてばかりいられない？
可夢偉 でも、結局、落ち着かないと結果って残せない。ガムシャラになったところで（うまく行くとは限らない）。ロボットみたいになって、精密な機械をどれだけ100%で走らせるかが勝負なんで。120%は使い切れないんで。
◆2010年、チャンスがあるならシーズン前半だ！
[STG] 今年は初めてフル参戦することになります。どういうシーズンになりそうですか?
可夢偉 ぼくは（シーズンの）最初の方がチャンスだと思います。後半は、ちょっと厳しくなるような気もするし。テストしてみないとわからないですけど。
[STG] 10年用のクルマは見ましたか?
可夢偉 クルマ自体は見てないですね。実車はモノコックだけです。風洞のモデルは見ましたけど。
[STG] 2010年、どういう年にしたいですか?
可夢偉 どっちかといえばポイント狙いではなく、表彰台を狙いたいです。コンスタントにっていうよりも。どっか一個、ドッカーン！てあれば──。
あとは、そこからコンスタントに行くのは簡単なんで。（でも）その逆はむずかしいですね。そのほうがぼくはいいと思います。
[STG] キャリア全体の流れからすると、今年はどんなポジションにいると思いますか？
可夢偉 下です。ゼッケンが（一番後ろの）26か27なんで。
[STG] どうやって上がっていくかしかない、と。
可夢偉 人間は、上にいるって（自分を）見たらダメですね。絶対、下にいるって見ないと。
[STG] いつからそういう風に思っているんです?
可夢偉 基本的にずっとですね。そういう風になれないです。カートのときは何もしなくても勝てたけど、4輪になってから初めて、（中嶋）一貴かな?負けたときに、天狗になったらダメだなって思いました。ホントに、何もしなくて勝てていたから。
相手を見て目標を決めるんじゃなくて、自分の中の目標っていうのを作って常に向上心を持たないと、勝ち続けることも無理ですし。
[STG] うーん、いい話！ 可夢偉ファンになっちゃったかもしれない（笑）。
可夢偉 それ女の子だったらいいんですけど(笑)
[STG] かわいい女の子が友達にいるかもしれないよ（笑）。
可夢偉 だったら（笑）。
[STG] ちなみに、ゴルフは?
可夢偉 ゴルフはやろうと思ったんですけど、無理でしたね。
[STG] 何でゴルフかというと、ゴルフに”わかったと思うな”という名言がある。わかったと思った瞬間が終わりだということです。どんな職業でも自分で満足したらおしまい。つねに何か勉強してるんだと思っていることが大事で。そのかわり、自信は持っていなければならないと。
可夢偉 なるほど。
