F1ドライバー 小林可夢偉 2010年 初春トーク 8/9
◆ワンストップ＆給油なしで、レースが変わる！
[STG] 開幕戦のグリッドは、どのへんにいると思います?
可夢偉 まだ走らしてもいないのに、むずかしいこと聞きますねぇ！ それがわかったら、気の持ちようが相当ラクなんですけど(笑)。
[STG] 希望でも、夢でもいいですが。
可夢偉 トップ10に入っていればいいですね。これは結構妥当なところなんじゃないかと思います。
[STG] あとは、レース運び?
可夢偉 今年はそこが勝負ですよ。ワンストップの給油なしですから。（搭載する）ガソリンの量が変わったことで、どれだけ（クルマの）バランスが変わるか、とか。最初と最後では（重量の違いで）バランスが大きく変わりますからね。5秒くらい差があるらしいです、ラップタイムが。
有松マネージャー フルタンクで燃料の搭載重量が170〜180kgと予想されているんですが、4で割ると45kgですから、軽自動車に女の子4人が乗っている感じですね。軽自動車だと3人降りると全然違うでしょ? そういう変化です。
可夢偉 そこがキーだと思います。もちろん予選も大事なんですが、それよりも最初の方はそこで差が出ると──。一発タイムを出さないとって、みんな思いがちですけど、タイミングもあるし。どうやってポイントを獲るかというのがレースだから。
[STG] 思った以上にレースは、これまでとは違う展開になると？
有松マネージャー 速く走ろうとしても速く走れないとか。たとえば（ブレーキの）パットが異常に磨耗しちゃったら、最後はとんでもないことになります。
可夢偉 （クルマの）重量が重いから、ブレーキの時間も長いんですよ。
[STG] そうか、ブレーキパッドは最後まで交換できないですからね。
可夢偉 そこはかなりキーですね。
◆今年、レースを決めるのはブレーキだ！
[STG] そういうような変化がレースにあるのは好きな方ですか?
可夢偉 気持ち的には好きじゃないんですけど、他の人と比べたらマシかもしれないです。
有松マネージャー 去年のレギュレーション変更の時点で、たぶん（ブレーキが）保たないので、ローターの幅を28mmから32mmにしようという動きはあったんですが、ウィリアムズが反対して変更しなかった。幅に変更なしで、そして常にいま以上に大きくて重いクルマを止めるってことは、パッドは硬い方になるんです。
可夢偉 シンガポールは（ブレーキが）死にますね、間違いなく。
有松マネージャー あと、ブレーキが厳しいカナダGPが復活しますから。
可夢偉 たぶん、ホンマに死にますよ。
有松マネージャー ブレーキの冷却と効きですね。効きは、悪い方にしか行かないと思います。
[STG] そういう意味ではザウバーみたいに、レースをよく知っているところの方がいいかもしれないね。
可夢偉 いやぁ、それが……。ザウバーは（ブレーキが）ブレンボなんですよね。
有松マネージャー だからそれをヒッコに換えないと、いまは保たないと思います。でも、ヒッコはブレーキのタッチは非常に悪い。
可夢偉 ヒッコでも最終的にはきついと思いますよ。
有松マネージャー でも、いまはチョイスがそれしかない。
可夢偉 そうそう。
有松マネージャー それに合わせていくっていうのは、結構大変で……。だから最初のテストやレースは、ブレーキのキャパシティがレースをコントロールすると。ブレーキによってレースが変わる。
[STG] ブレーキはサスペンションの一部だと言われますから。
可夢偉 そういう言い方しますね。それは、バトンに言わすと、そうじゃないと思いますけど(笑)。
一同 (笑)
可夢偉 （バトンは）そんなわけがない、これは止まるもんやって（笑）。
[STG] 昨日、もう一度ブラジルのその場面（可夢偉とバトンがやり合った場面）のビデオ見たけれど、チャンピオンになったら、バトンはああいう風に言うしかないと思いました。”あいつは気が狂ってんだ”とかね。（可夢偉を）抜いたら、（バトンは）また抜かれちゃってる。その照れ隠しというか、反動で”あいつはサイテーだ”となる。
1991年の日本GPで、(エディ･)アーバインは(アイルトン･)セナに、どかずにジャマをしたということで殴られてますからね。ということで、普通だったらバトンはチャンピオンが懸かっているし、初めてのレースの可夢偉はおとなしくしていないといけない、と思うのが普通。だから（可夢偉は）肝っ玉が据わってるなと。
可夢偉 ぼく、バカなんですって（笑）。
[STG] たしかに！（笑）いい意味でそうだと思います。
可夢偉 だって、そんなの関係ないですから。自分が損するだけですから、何で向こうが得ばっかりするんだって。
[STG] それが周回遅れだったら話は別だけど。
可夢偉 ええ、周回遅れならね。
有松マネージャー （可夢偉は）ひょっとしたらポイント取れるかもしれないってところを走っていたわけだし。
