小林可夢偉 帰国会見全録-3
◆メルボルンの”接触”は、いまだに真相不明!?
—-メルボルン、オーストラリアGPの”事故”のあとで、ほかのドライバーから、何か文句は言われた?
小林可夢偉(コバヤシカムイ、以下可夢偉) いや、まったく?(ありません)だいたい、誰と当たったか、いまだにわかってないですけど(笑)。
—-あのアクシデントは、壁とのクラッシュ以前に、誰かと接触していて、その段階で、すでにウイングがトラブルになっていたようですが?
可夢偉 (ザウバーの)データ上では、ステアリングが”動いた”(何らかの外力が加わった)というのはあったんですけど、ただ、それは当たって(誰かと衝突して)動いたのかどうかはわからないくらいの、データ上のデータだったので。それも、正直なところ、微妙なところですね。
ただ、結論的にいうと、ちょっと(他車と)接触しただけでフロント・ウイングが落ちるというのはマズいという結論に達したので、ぼくはチームに、当たった(ぶつかった)かどうかではなく、このフロント・ウイングが何でこんな簡単に落ちるのかということで、スイス(ザウバーの本拠)にウイングを送ってもらって、(そのパーツが)還ってきたのがメルボルンだったので。
だからチームも、ぼくを”疑う”のではなくて、その問題点をわかってくれてるので、そういう意味での(チームとの)信頼関係はできあがっているという状況ですね。
◆ザウバーに足らないもの? それは予算だ?
—-もし、現状のザウバー・チームに”足らない”ところがあるとすれば?
可夢偉 うーん、いまの段階では、足りないものがあるというのは、やっぱり「予算」ですね?(笑)。間違いなく予算です、そこは。これ以外にないですね。
チームとしてはポテンシャルはあるし・・・、今年、100人以上人をカットした(解雇した)のかな? でも、そういうなかでも、やる仕事は、そこまで、それほど去年と変わってない。
ただ、予算が少ない分、たとえば、セットアップのパーツ(の量)だったり、ステップが20段階あったとすれば、それを(段階を踏まずに)飛ばしたりして、できるだけ、予算を削減できるようには(チームは)やってます。
だから、先週のマレーシアでぼくが借りたレンタカーなんて、ひどかったですよ(笑)。(走行距離は)25万キロでしたよ? 初めて、あんな(状態の)クルマに乗りましたよ?(笑)
でもチームメイトのぺドロ(デ・ラ・ロサ/22ザウバー)も、そういう状態でも、文句いわずに、何がほんとに大事か・・・。(レーシングマシンの)パフォーマンス(の向上)を優先するときに、レンタカーいいのを借りたって、パフォーマンスには変わらない(影響ない)わけで。
そういう部分は、ペドロ(デ・ラ・ロサ)も、レンタカーにしても、しょうがない、予算がないんやもんということで、どこをほんとに重視するかということをお互い考えながら、結局、ひとつのゴールに向かっているので。
(チームは)人が少ない分、コミュニケーション自体、えー、なんてんやろ・・・「話」が(すぐに)伝わるというか、そういう(伝達の)速度がやっぱり速いし。
もちろんこの先、やらなければいけないことはあると思うんですけど、でも、大きい企業よりも、こういう小さい(ザウバーのような)会社の方が、ひとつ(何かを)「やる」と決めたときの”速度”というのは、やっぱり速いんで、そういうところを活かせればと思います。
—-「ピーター・ザウバーさん」というのは、どういう人?
可夢偉 ピーターはね、すごく「細かい」ですよ、いや、ほんとに。スイス人で、これまでは正直、スイス人とはあまり関わりがなかったんですけど、スイスの人って、やっぱり「きびしいな」と思ったこともあったんですけど。でも、それはね、いい意味で「きびしい」と思うんですよね。
だから、ピーターは「人」としても、すごくいい人で・・・。前回のレース(のリタイヤ)でも、何で(クルマが)止まったかというのは、べつにピーターのせいじゃないんですよね、ぼくもピーターのせいだとは思ってないし。でも、ピーターが(ぼくのところに)わざわざ来て、「せっかく”いいレース”していたのに、ごめんなさい」と言ってくれて・・・。ドライバーの気持ちをわかってくれてるというか。
もちろん、ぼくがダメな部分については、すごい勢いで言ってくるんですけど、それは(チームとして)
“ゴール”はひとつということで、それを(ピーターが)言うのは当たり前なんですね。相手を気遣っているばっかりでは、これから(のディベロプメント)につながらないんで・・・。そういう意味では、(ピーターが指摘してくれるのは)すごく大事だと思ってます。