F.マッサのスピンは「次なる進化」の証?!
ヨーロッパGPスケジュール初日、午後のフリー走行2で、二度目のコースインをしたフェラーリのF.マッサが、ピットアウトしたその周にスピン。赤旗でセッションが中断した。
コクピットを出て、コース上に止まったマシンを恨めしそうに振り返るF.マッサを見て、”またやった”と誰もが思った。だが、実はこのスピンには、そうなる”理由”が存在した。注目を集めている”ブロー・エキゾースト”がその原因だったのではないか、と。
ヨーロッパGPは、多くのチームが、今年最大級のアップデートを実施したマシンを持ち込んだ。特にフェラーリは、大きな変更を加えてバレンシアにやってきた。
フェラーリの最大の変更は、ヨーロッパGPで注目を集めている”ブロー・エクゾースト”。排気圧による風圧を吹きつけることで、空気の流れを制御してダウンフォースを稼ぐ、という、通称”Fダクト”に続く新しい空力手法だ。この方法じたいは、以前から存在しているが、さらに積極的に排気圧を利用するようになった。
フリー走行2で、真っ先にF.アロンソとF.マッサがコースインした。通常、セッション開始早々にコースインするのは、下位チームと相場は決まっている。少しでも走行距離を稼いでデータを取りたいからだ。フェラーリに限らず、マクラーレンやレッドブルなどトップチームは、余裕を持って、ラバーグリップが乗るのを待ってから走り始めるのがいつもの姿だが、今回は違った。
フェラーリが真っ先にコースインしたのは、アロンソの地元で、サービス精神を発揮したから、というわけではない。新たなセットで、少しでも多くの実走テストをしたかったからだ。
フェラーリが確認したかったのは、新たに投入したブロー・エキゾースト・システムが走行に与える影響やフィーリングだったはずだ。排気エネルギーを利用することで、空気の流れを利用してダウンフォースを増やす、というシステムには、ひとつ無視できない問題が出る。
排気圧を利用するなら、その効果が出るための条件がある。排気圧が上るのは、”アクセルオンの状態”。つまり、全開で走行してきたマシンは、最大の排気圧を発生しているが、コーナー手前でアクセルを閉じた状態にした瞬間にエンジン回転が下降して排気圧が減る。結果としてダウンフォースが変化し、ならばマシンの姿勢や車高が変わることで、マシンの挙動は、ブロー・エキゾーストを使っていないときと微妙に違う挙動を示す。だからF.マッサはスピンしたのではないか。スピンしたのは、これまで慣れ親しんだ挙動と違った動きを見せた結果だったのではないか、ということだ。
いずれにしろ、F1の空力は、そうした深さまで到達している、という観方をすれば、予選の動きが興味深くなる。