ホットライン 2010 Round 9 ヨーロッパ・グランプリ(1/2)
J.バトンは可夢偉を「抜けなかった」。
ヨーロッパGPで小林可夢偉が”魅せるレース”を展開。クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとスティンガー編集長も思わず興奮の極致、になりつつ、冷静な視点から、小林可夢偉の活躍を分析します。
◆拝啓、小林可夢偉さま、驚嘆と賞賛を謹んで捧げます!
羽端恭一(以下、羽端) うーん、声にすると”ウワーオ〜!”ですかね?(笑)
山口正己(STINGER編集長、[STG])何ですか、それは?
羽端: いや、ヨーロッパ・グランプリでの可夢偉! 驚きと賞賛、これを混ぜて音にすると、「ウワーオ〜!」
[STG] まったく同感、てゆ〜か、F.アロンソを抜いたときに、まさにプレスルームでそう叫んだし(笑)。
羽端: 驚きというのは、まずは結果ね。7位ですよね。
[STG] 現状では、いまのザウバーのポテンシャルからして、10位以内の入賞がターゲットですからね。7位はさん然と輝いている。
羽端: そして、その「7位」のなり方が、なかなかすごいじゃないですか!
[STG] この裏には、いくつもF1ドライバーとしての”能力”が隠れていると思います。まずは、みんなが次々にピットインしていく中でコース上に留まったという、もちろんギャンブルだが、それを選んだチームと従った可夢偉。そして、その作戦を遂行するために、持てる力を最大限活かしてJ.バトンの前を走り続け、さらにハイペースを保ちながらタイヤを温存していた能力。
羽端: うんうん、バトン以下に「フタをした」とか書いてたところもあったけど、でも、バトンのジャマをしまくって、あそこに居続けたということじゃない。
[STG] その状態で、実は可夢偉のタイヤは、ペースを維持したままでゴールまで行けたってんだからすごい。タイヤの使い方が猛烈にウマかった、ということです。F.アロンソは、タイヤをうまく使う名手ですが、彼でさえ終盤はタイヤを傷めて、だから可夢偉に抜かれてます。
羽端: あのアロンソをコーナーの進入でパスして・・・。
[STG] 当たってもいいと思った、とここで可夢偉が考えたというのもすごい。というのは、前戦のカナダで、”欲が出た”結果としてクラッシュして、P.ザウバー代表から叱責を受けている。そうしたマイナスを取り返すのは簡単じゃないので、ここは守りに入っての9位でも、誰も文句は言わなかったはず。
羽端: そう。でも、可夢偉は”やった”。行くときは行っちゃうというのは、これはレーサーの本能でしょうね。
[STG] 本当に”やってくれました”。それも、全然不安なく。見ていて危なっかしいことがまるでなかったですからね。
羽端: そういえば、彼のレースは、見ててヒヤヒヤすることがない。
[STG] それだけウマイってことです。それでいて、やるときはやる!!
羽端: さらに、最終ラップの最終コーナーで、ブエミを・・・。
[STG] ザウバーのピットでは、F.アロンソを抜いたことで興奮していたから、最終コーナーを可夢偉が先に出てきたときは、”えっ?”という目が点状態だったとか(笑)。
羽端: このブエミのときは、首位がチェッカーを受けた後だったので、中継カメラは主にそっちを映してた。だから、フィニッシュ・ラインに可夢偉が還ってきたときには、もう順位が変わってた。
[STG] ですね。
羽端: 視聴者としては、あれ、可夢偉、前にいるじゃん! という・・・(笑)。
[STG] それが視聴者だけじゃなかったのがおかしい(笑)。
羽端: ハハハ、チームもね!(笑)それでアロンソに関しては、インタビューのなかで、彼のブレーキングが各コーナーで早かったとコメントしてますよね。つまり、ちゃんと”見ていた”わけで。
[STG] 本人は、F.アロンソに仕掛けたときに”行き過ぎて飛び出してもいいと思った”と言っているけれど、彼にはちゃんとした計算があったはず。相手が違ったらやらなかったかも。
羽端: ははあ、ぼくらへの”リップ・サービス”ですね!(笑)11位から10位を狙うときなら、そうやって攻めたかもしれないけど、あの時は、もうポイント圏内にいたわけだし。
[STG] そこで満足しない、というのが”上を見ているアスリート”の必須条件と思います。
羽端: あの時のアロンソについては、これはそんなにリスクをかけずに行ける、抜ける! こう思って、かなり余裕で行ったのでは?
[STG] まぁ、余裕は言い過ぎにしても、彼なりの”見切り”はあったと思います。
ホットライン 2010 Round 9 ヨーロッパ・グランプリ(2/2)に続く。