ホットライン 2010 Round 9 ヨーロッパ・グランプリ(2/2)
◆”喜ばない可夢偉”に、さらに賞賛を!
羽端: そして、ではどうして、スタートでは18番グリッドにいたはずなのに、レース終盤で、そんなポイント圏内に、可夢偉はいたかというと──
[STG] セーフティ・カーが入って、低速走行中にタイヤを交換するというのはタイムロスを最小限に留める常套手段。しかし、もともと予選18番手では、みんなと同じことをやっても何のゲインもできないポジションなわけです。そこで、ギャンブルに出た。要するにダメモト作戦。それが大当たりした。
羽端: でも、単にそのタイミングだけが好成績を呼んだわけじゃないですよね?
[STG] その後の可夢偉のヘッチャラぶり、後ろはレッドブルとどっちが上かというトップ争いができるマクラーレンのJ.バトンだったけれど、全然動じず
に、きっちりポジションを守り通した。無理に進路を阻むこともなく。
羽端: そうですね、ペースもよかった。
[STG] レース中は、重い燃料で周囲も遅くなるので、ザウバーにとって他との差がなくなる方向の条件になるわけです。それにしても可夢偉は最高の仕事を
したと思います。ただし。
羽端: ただし?
[STG] 状況の中で非常にいい仕事をしたというのは間違いないけれど、でもチームにすれば”たかだか7位”です。7位になるために走っているんじゃないですから。
羽端: そうですね、可夢偉がイマイチ、そんなに嬉しそうにしない、というか嬉しさを”見せない”のは、ひとつはそれだと思います。あのレースで、予定通り
に(!)セーフティ・カーが入らなかったら、どうだったのよ? こういう風に考えると、彼としては、ぼくらほどには喜べない?
[STG] ということだと思います。
羽端: でも、ぼくらは”勝手な観客”ですからね!(笑) 可夢偉がいやがっても、勝手に盛り上がらせてもらいます! この7位はすごい、と!
[STG] 同感!!(笑)
羽端: ・・・で、はじめの「驚きと賞賛」のミックスですけど、そういった可夢偉のクールさも、とっても、ウワーオ〜!です。
[STG] ブリヂストンの浜島さんが、レース前に、”上位グループは全車ソフトタイヤで予選を走った。レースを睨んでのことだろうが、例えばルノーとか、勝てないことが
分かっているなら、思い切ってプライム(固い方のタイヤ)を選んでもよかったんじゃないか”というようなことを言ってますが、それを可夢偉が実践したかたちですね。
羽端: ”王道”ではない作戦、ですよね。これも、端から見てるとカッコいいというか、柔軟でいい感じだけど、ただ、当事者の身になってみるとね。つまり、
何でそんなゲリラ的な作戦を採るのかというと、自分たちが「弱者」だったからですよね?
[STG] その通り。だから手放しで喜ぶと、見る人が見るとそれは愚か者になる。関係ない話を思い出しました。去年の日本GPで2位になったトヨタを、社長が”準優勝”と言って褒めたたえた。F1の世界は、”勝つために参加している”から、2位は、”負けたうちの一番”以外のナニモノでもない(笑)。
羽端: それがあって、可夢偉は、かなり本気で、そんなに嬉しくないって言ってるんじゃないかな?
[STG] だと思います。志やよし、ですね。オレタチはもっと上に行かなくちゃいけないんだと。だから私は会見の最後に、可夢偉に、可愛くないなぁといいました。こっちは彼の領域から置いてきぼりですからね(笑)。
羽端: でも、そんな可夢偉に、やっぱり、「ウワーオ〜!」です。逆にいうと、これで喜んじゃったら、先がないかも、なので・・・。
[STG] 残念ながら同感です!(笑)