ホットライン2010 round12 ハンガリーGP (PART-1)
クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとスティンガー編集長が、ハンガリーGPの裏舞台をズバリ診断する。
◆ドラマのように、主人公=可夢偉に、たくさんの辛苦が降りかかる!
羽端恭一(以下、羽端) いやあ、波瀾万丈な(笑)週末でしたねえ!
スティンガー編集長山口正己(以下、[STG])ホントに、ある意味メチャクチャ(笑)。
羽端: まず予選で、何と、可夢偉は”タイムアタック”ができなかった!!
[STG] 間合いが悪くて、まずはR.クビツァに、2回目はB.セナに、結果として邪魔されて、タイヤをうまく温めてアタックに入るリズムを失ってしまったようですね。
羽端: チームは、Q1ならハード側タイヤで十分にクリアできるという判断だったのかな? ザウバーは、いま、そのくらいの自信を持っている?
[STG] それもありましたね。奢りとまではいかなくても、チームにはそういう自負があった。しかし、臨機応変にやってほしかった。
羽端: そうですね、やっぱりあれはチームとして「ミス」だったと思います。
[STG] まぁ、ミスといえるのは結果を見た上でのことなので(笑)。もう少しいえば、R.クビツァとB.セナにアタックを邪魔されたとして、だとしたら”どうしてそこに送り出してしまったか”という責任もチームにはありますね。マネージング・ディレクターのモニシャは、それを残念がっていました。
羽端: ミスといえば、可夢偉がピットサインを見逃して、5グリッド降格という笑い話みたいなミスもあって(笑)。
[STG] あれは完全に不注意のミスですね(笑)。しかし、そこで転んで、ただで起きないどころか、それをバネにしちゃうのが小林可夢偉だったと(笑)。
羽端: クルマはキマッてない、タイムアタックはジャマされる、ソフトタイヤで予選を走れなかった、グリッドは下げられる。主人公が、これでもかっ! というくらい辛い目に遭わされるのは、韓流ドラマのシナリオでもここまでやらないというか(笑)。
[STG] そうそう!! で最後は水戸黄門(笑)。
羽端: え、ソコへ行きましたか!?(笑)。
[STG] 再放送やってるからいいじゃないですか(笑)。
◆日曜日、小林可夢偉は”フィッシュ”になった!
羽端: でも、そんな悪夢のような土曜日の前篇が終わって、日曜日になり、ドラマが後篇になったら、いきなり主人公は「フィッシュ」になって!(笑)
[STG] この表現も面白いですね。“Clockwork Kamui”を書いている世良さんが、”魚群の動きを研究しているんじゃないか”と表現してました。魚のような感覚を身につけているのかも、って。
羽端: あれは、マジックスタートでした。スタートの時、先頭を見ないで(笑)後方を見てたんですが、走り出した途端に、”白いクルマ”は、ほんとにサカナのように、一瞬でヌルリと抜け出していた!
[STG] いかに後方集団だったからといっても、なかなかああはいかない。
羽端: もちろん、新興チームとザウバーでは、クルマにかなりの差はあるかもしれない。それでも、彼らを”撃ち落とす”ときの時間の短さというか、まったく手間取らないというか、驚異の早撃ちというか(笑)。
[STG] 腕と「魚能力」と、それから決断力ですね。
羽端: まあ、うまく隙を見つけてるんでしょうけど。でも、前が開くのも、ドライバーの才能のうちだと思うなあ!(笑)
[STG] 同感。
羽端: そして、可夢偉が上位集団に追いついたあとは、今度は、主人公以外の面々に、次々と悪夢が降りかかる。一人欠け、二人欠け、主人公だけが順位を上げて行く。
[STG] 神様は、ちゃんとやっている者に味方する、みたいな(笑)。
羽端: さらに、主人公に”絡む”のが二人とも大物! 世界チャンピオンたちが主人公を盛り立てるというのは、韓流ドラマでも、ここまではやらないというか(笑)。
[STG] さしづめ、J.バトンが角さんで、M.シューマッハが助さん(笑)。
羽端: こだわりますね、水戸黄門に(笑)。でも、そうやってシューマッハやバトンとやり合いながら、実は、可夢偉が一番気にしていたのはバリチェロだったんだ・・・という、そうだったのか! というドラマ的なオチもあって(笑)。
[STG] そういう気配りも可夢偉の得意技で、マネージメントを担当している関係者も可夢偉のそこを高く買っているようです。
羽端: あと、もうひとつ感心したのは、クルマの出来については、少なくとも可夢偉は満足してなかったということ。
[STG] そうですね、次にはシャシーを換えてもらわんと、と言っていたから、クルマは相当ヘンだったんだと思いますよ。
羽端: でも、にもかかわらず、そういうダメな馬を巧みに操って、欠点を露わにしないようにしながら、その馬の最大能力を引き出す。グチも言わずに、ね!(笑)
[STG] そこなんです。普通だったら、というか自分に照らし合わせてみると、”だからうまくできなくてもしょうがない”と思いたくなる。でも、前々から、これは(中嶋)一貴もよく言っているし、(山本)左近も同じことを口にしますが、与えられたもので戦うしかない。
羽端: 彼の言う「まとめる」というのは、その意味のなかに、こういうことも入ってるのかもしれないですね。
[STG] ですね。与えられたもの能力を、自分の仕事としてどこまでしっかり引き出せるか、と。それを、3週間の夏休みに入る前というタイミングで、きっちりやってくれましたね。
羽端: それにしても、繰り返しになるけど、ドラマ以上に楽しめた週末でした。可夢偉、ありがとう!
[STG] で、可夢偉だけじゃなくて、F1ありがとう(笑)。