ホットライン2010 round13 ベルギーGP 1/3
クルマ好きのエディター･羽端恭一さんとスティンガー編集長が、ベルギーGPの裏舞台をズバリ診断する。
◆コースと天候がハンパじゃない、スパ!
羽端: 今回は、改めて「スパ」ってすごいトコなんだなと思いましたね!
［STG］いろんなすごさがありましたね! まずは雨。スパ･ウェザーというけれど、今年は特別でした。20年間連続してレースが雨だったという記録があるらしく、スパは雨だ、と知ったようなことを言っていた我々に、天罰が下った(笑)。
羽端: そんなにひどかった?!
［STG］ とにかく、乾くと降る、降ったと思ったら乾いちゃう、という連続でしたから。”翻弄”というのはこのためにあると思ったくらい(笑)。
羽端: それが、難しいコース･レイアウトですからね。このコースって、ドライバーから見ると、ブラインドだらけではないですか?
［STG］ そうですね。
羽端: 典型が”オー･ルージュ”ですよね。あれだけの坂を下って登る、というの、フツーのコース設計者なら、やらないというか、できない?(笑)
［STG］ 設計というか、自然の地形でああなったんだと思います。
羽端: 日本でいうと、菅生を、もっと雄大にして、高速にして、そしてブラインドの度合いを上げて、というか──。
［STG］ なるほど菅生か。言えるかも。でも、難易度的に言うと鈴鹿ですかね。
羽端: しかも、”オー･ルージュ”って、あらためて見ると、登ったあとでコーナーになってるんですよね。ブラインド状態で”山”を登って、登ってみたら、道がいきなり曲がっていた!(笑)
［STG］ 私は、あそこを全開でいけるドライバー、まぁ全員ですけど(笑)、神経が信じられない。通過速度が320km/hって、バカこくでねぇ! みたいな(笑)。
羽端: ハハハ、しかし、たしかに、ですね。
［STG］ オー･ルージュのほかにも、すごいところがあります。その先のストレートのシケイン以後の下り区間は、まさに”心臓破り”と思います。随分前に、市販車で走ったけど、怖いなんてもんじゃない。たかだか80km/hくらいだったけど(笑)。
羽端: そして、天気です。一瞬先は闇!というか、10分後にどうなるかがわからない。
［STG］ もっといえば、コーナーを曲がったら濡れていた、みたいな。
羽端: でもって、雨が降った!･･･ということで対応しようにも、一周が長いから、ピットにたどり着くまでがタイヘン!(笑)
［STG］ 鈴鹿もそうだけれど、こっちが降ってないのにあっちが降っている、というのがコースの部分部分で起きますから。
羽端: だから、タイヤにしても、どうやって使うか? さまざまなリスクを見越してのタイヤ戦略みたいなことが必要になってくる。
［STG］それに、1周が長いから、”余計なこと”を考える時間がある。それが判断を乱す、という側面もあるようです。
羽端: 臨機応変、が重要、と。
［STG］その場の場で瞬時に適応する能力。そもそも自動車レースは、コーナーの入り口で、”ここは何km/hで入っていける”という物理的限界を感覚的に瞬間判断する闘いと思いますけど、スパはそれがもっと厳しく要求される。
羽端: 浜島さんも、インター(ミディエイト)をすり減らしちゃった、不可思議なチームがあると、洩らしておられましたよね。
［STG］ 使い方もそうですね。フェラーリとは明言していませんでしたが(笑)。
羽端: で、フェラーリと対照的だったのがマクラーレン?
［STG］ 予選では、ドライ路面を読んで、新しいオプションでアタックして、そのオプションをもう一回使ってアタックした上で、新品を卸す、という繰り返しで、実に効率よくタイヤを使っていました。
羽端: おうおう、そういうことですか。
［STG］ それから、イギリスの雨、ですね。
羽端: イングリッシュ･ウェザーのことですか?
［STG］ です。気まぐれな雨に、イギリスのチームは慣れている。
羽端: なるほど!!
［STG］ “雨”の経験が豊富なので、変わりやすい天候への対応策として、こういうときはどうすべきか、ということを体験として知っている。
羽端: 英国は、一日のなかに四季があるといわれますよね。寒い／暑いだけでなく、雨期も含まれるんだな!(笑)
［STG］ その、身体に染みついた経験を生かした、とまぁ、レースをよく知っている人からの受け売りですが(笑)。
