レッドブルにマクラーレンが迫る
鈴鹿で圧倒的なスピードを見せたレッドブルが苦戦している。もちろん”苦戦”といっても順位が下がるわけではなく、相変わらずトップレベルには踏ん張っている。だが、鈴鹿で見せた圧倒的で別クラスを思わせるスピードは陰をひそめることになりそうだ。
それは、コース・レイアウトによるところが大きい。鈴鹿は、特に第一セクターの「息をする間もないほど左右のコーナーが連続する」区間で、レッドブルは駿足を見せた。マシンの取り回しのよさが扱いやすさを呼び、そこに効率のいいダウンフォースが加わって、鉄壁の強さだった。しかし、KIC(韓国国際サーキット)では事情が違う。
KICの特徴は、「1〜4コーナーの長いストレート区間とその後」に大きく二分できる。前半部分は最高速が必要だが、後半部分は安定性が肝。つまり、前半部分の抵抗を少なくしたいからダウンフォースを減らしたいが、後半部分はその逆になる。十分なダウンフォースを持つレッドブルは、前半部分でのロスを軽減するために、ダウンフォースを削って金曜日を走り、だからセクター2と3の得意なはずの区間でリードを築けなかった。
そして、重要なのは、タイトル争いを考えること。5人に絞られたタイトル争いは、1ポイントが重要な意味を持つことになるかもしれない。ならば、レッドブルの二人は”守り”のレースをしたくなるのが人情。しかし、M.ウェバーは、いつになく積極的なプッシュをみせているところが興味深い。
もうひとつ、マクラーレンがレッドブルとの距離をグッと縮めているが、これは、L.ハミルトンとJ.バトンがタイトルに望みを託すには”攻めしかない”ことを理解しているからだ。
ここにきて、上位陣は、残りエンジンの数とマイレージを気にしながら闘いを進めなければならない。レッドブルの2台とフェラーリのF.アロンソがギヤボックスを含めて繊細な神経を配りながら走行しなければならない。しかしマクラーレンは、獲得ポイントと残りのレースの関係から、オールorナッシング作戦を取れる。いや、勝つためにはその作戦しかない。
リスクを背負って攻めるマクラーレンと、守りのレッドブル。そこにフェラーリがどう絡み、さらに直後から機敏なシャシーをもつルノーのR.クビツァが虎視眈々と狙っている。
初の韓国でのレースは、様々な意味で興味深い方向に進んでいる。