「F150」 解説とスペック
社内では「662」のコードネームで呼ばれていたフェラーリ57作目のシングルシーターは、イタリア統一150周年を祝福するため「F150」と命名された。ひと目見て感じられるように、2010年のF10、もっと言えば2009年のF60(それにしても、フェラーリはネーミングの統一性に欠ける)の延長線上にある外形デザイン。Fダクトとマルチ・ディフューザーの禁止、ブローン・ディフューザーの継続採用、リヤ可変ウィングの新規導入などなど、レギュレーションの変更に合わせつつ、昨シーズンを通じて感じた「いいところ」を織り込んだ設計に違いない。
F10との比較で顕著なのは、ノーズの高さだ。F60からF10に切り替わった際もノーズは高くなったが、F150ではさらに高くなった。ノーズとフロントウィングに囲まれた空間からできるだけ大量の空気を取り込み、フロア下と後方へクリーンな空気を流してダウンフォースの獲得に努めるのが、2009年以降の空力設計のトレンド。フェラーリは、その考えをさらに推し進めてきた。
F10ではモノコック底面両サイドを削ってラウンドした形状とし、削った分を上面に移してバルクヘッドの最低断面積に関する規定を満たすVノーズ(2009年のレッドブルRB5が端緒。上面の突起ではなく、下面の切り欠きが空力上重要)を採用した。F150ではオーソドックスな四角形断面に戻している。この設計変更は、モノコックの高さ制限が厳しくなったことと関係あるのだろうか。他チームのソリューションに注視したい。
モノコック下の空間を意識した現れか、フロント・サスペンションのレイアウトは変更を受けている。F10はロワー・ウィッシュボーン前側アームをセンターキールでマウントしていたが、F150ではゼロキールに戻した。リヤはレッドブルが採用したプルロッド式へ追随せず、プッシュロッド式を踏襲。ただし、プッシュロッドはかなり前傾しており、サスペンション構成ユニットを前寄りに配置していることがうかがえる(2010年のルノーR30のレイアウトを彷彿させる)。
KERSの再導入は明言。マニエッティ・マレリとの共同開発であることは2009年のときと変わらないが、軽く、コンパクトなシステムになっているという。パワートレーンを供給するザウバーとトロ・ロッソにも同じシステムを供給する考え。シーズン前のテスト期間が15日しかないことを考えれば、複数チームで実証データを共有できるのは強みだ。
■シャシー
型式: F150
モノコック: カーボンファイバー&ハニカム・コンポジット構造
ギヤ・ボックス: フェラーリ製縦型ギヤ・ボックス(LSD)
トランスミッション: セミオートマチック・シーケンシャル電子制御ギヤ・ボックス(クイックシフト)
ギヤ: 7速+リバース
ブレーキ: ブレンボ製 ベンチレーテッド・カーボンファイバー・ディスクブレーキ
サスペンション: プッシュロッド式トーション・スプリング独立型縣架サスペンション(フロント&リヤ)
総重量: 640kg(ドライバー、燃料込み)
ホイール: BBS製 13インチホイール(フロント&リヤ)
■エンジン
型式: フェラーリ056
タイプ: 90°V型8気筒(砂型鋳造アルミブロック)
バルブ数: 32
バルブ駆動: 圧搾空気式
総排気量: 2398cm3
ピストン径: 98mm
エンジン重量: 95kg
燃料: シェル V-Power
潤滑油: シェル・ヒリックス・ウルトラ
大きい写真はこちら(WEB専用ページです)。
http://www.f1-stinger.com/f1-data/2011/team/ferrari/photo_gallery/