ロータス・ルノーGPのKERS講座
コクピット前方のRの下にある黄色い▲マークがKERS搭載を示す高電圧注意のマーク。
2010年には姿を消していたKERS(運動エネルギー回生システム)が、今年はもどってくる。昨年もレギュレーションで禁止されていたわけではなく、チーム間の申し合わせによって凍結されていた、というのが事実だ。今回はコストに見合ったハイブリッドの動力として復活することとなった。
■KERSが戻ってきた理由
昨年は必要ないとされていたものが、なぜ2011年には各チームの熱心な研究テーマになっているのだろう。それは状況が大きく変わり、コスト面で採算のとれる見込みが出てきたから。また、この技術はハイブリッドや電気自動車といった一般の車両にも応用可能であり、F1が最先端の技術を開発することが重要と考えられたためでもある。これによってより軽く効率的なシステムが追求される。
■2009年との比較
電気モーターの大きさと1周ごとに使用できる時間はレギュレーションで制限されており、その内容は2009年とまったく同じだ。KERSの出力は60キロワットとされ、ドライバーがステアリング・ホイール上にいあるボタンを押すと、約80馬力のパワーが後輪に伝えられる。使用可能なのは1周につき400キロジュールまでで、時間にするとおよそ7秒間ということになる。
■ロータス・ルノーが使用するKERSと2年前のものとの相違点
2011年型の基本は2009年と同じだが、効率を高めるために完全な見直しがおこなわれた。収納の問題も含め、あらゆる点が改良されている。軽量化とともに、着脱が容易な装着方法も検討された。新しいシステムは2009年より10kg以上軽くなっている。
■2011年にKERSを使用するチーム
重量が増加する分、貴重なバラスとの位置が制限されるため、2009年にKERSを使用することは妥協を求められるものだった。マシンのバランスを最良に保つことが難しく、使用できるバラストが少ない大柄なドライバーの場合は、特にその傾向が顕著だった。結果的に、多くのチームがKERSの使用を断念している。この問題を解決するため、マシンの最低重量が620kgから640kgに引き上げられた。重量の増加と追加かされるパワーの関係が変わったことから、今年はほとんどのチームがKERSを使用する。
■2011年の規定でKERSの出力がアップされなかった理由
開発コストを抑えるには、2009年のシステムを踏襲することが望ましかった。そのため、出力も以前のままとされている。2013年にはエンジン規定が大幅に変更されることとなっており、従来の規定を変更しないことで、各チームは新しいレギュレーションを見据えたシステムの開発により多くの精力を費やすことができる。
■KERSを使用する利点
いくつかの点から、2011年にKERSを使用することは2009年の場合よりも有利になっている。まず、給油が禁止されたために、レースの組み立てで順位を変えるのが難しくなり、予選順位の重要性が増したこと。予選ではKERSの出力を最大限に使用できるため、その点で優位を確保することができる。また、順位を上げる絶好の機会であるスタートでも、最初のコーナーまでの加速競争でKERSが威力を発揮する。マシンの構造が複雑になり、装着にも工夫が必要だが、それよりもメリットの方が大きいともの考えられる。
■KERSの安全性
高圧電流がバッテリーに蓄えられるため、不用意な扱いは負傷の原因にもなりかねない。2009年にKERSの安全性を研究したグループのガイドラインは、そのまま適用される。さらにロータス・ルノーは独自の手順を定め、スタッフの安全を確保するよう努めている。