開幕戦トピックス 気になるポイントをチェック!!
◆マクラーレンが突然速くなった!!
開幕戦のスケジュール初日最大のサプライズは、マクラーレンの駿足だった。一部には、”失敗作でという”風評”もあったが、マクラーレンに、金曜日のフリー走行が始まるとすぐに、その風評はたちまち吹き飛ばされた。じつはそうなる条件がそろっていたのだ。
マクラーレンがトップチームであることに異論はないだろう。ならば、バーレーンGPが日程から外れて、オーストラリアが開幕戦になったことを考えると、”2週間の猶予”がマクラーレンに与えられた、という見方が成立する。
仮に開幕戦が3月13日のバーレーンGPのままだったとしたら、マクラーレンは、風評通り苦戦を強いられた可能性はある。しかし、この2週間をマクラーレンは、進化のための時間として有効活用したのだ。
テストでのデータをスーパーコンピューターで解析し、そのデータを投影したパーツをファクトリーで製作する。中には、クラッシュテストを受けるパーツもあったかもしれない。そうして完成したパーツを、オーストラリアのスケジュールにギリギリ持ち込むための手段は、当然、費用の嵩む航空便になる。ロジスティックまで含めて、資金とノウハウがあるマクラーレンだからこそ、実行できたのだ。逆に言えば、状況を理解している関係者の多くは、マクラーレンのスピードアップに対して、速かったとしてもさしたる驚きがない、という見方をしていた。
◆大きく分かれたマシン・セッティング
今年、車両規則で、外からは見えないが、レース展開を大きく左右しそうなのが、前後重量配分を固定せよ、という新規則だ。前56:後ろ44(正確には、フロントが45.4〜46.5、リヤが53.5〜54.5%)に重量配分が固定されると、バラスト搭載による操縦性のコントロールの幅が大きく狭められる。
これに加えて、タイヤ特性が去年のブリヂストンと今年のピレリは大きく違うといわれている。今年のピレリの特徴として、ブレーキングの難しさが挙げられている。前後タイヤのバランスが、(ピレリはそれを、”レースを面白くするために狙った”としているが)どちらかというと不安定方向にある。
その結果、金曜日のフリー走行では、コースオフのパターンが両極端に現れていた。両極端とは、フロントをロックさせて曲がりきれないか、ブレーキングの瞬間にリヤが出てスピンするかのどちかだった。
例えば、フェラーリは、アロンソとマッサのセッティングが大きく違って見えた。マッサのコースオフは、ブレーキの瞬間にリヤが出るタイプ、アロンソは逆の動きが見えた。また、マクラーレンのハミルトンは、何度もフロントタイヤをロックさせる場面がモニターに映し出されていた。ただし、マクラーレンの場合、激しいハミルトンの走りと難しいピレリ・タイヤを包括するマシン・ポテンシャルを身につけたと見ることもできそうだ。
◆レッドブルが木曜遅くまで作業していた理由
レッドブルは、フリー走行2回目の序盤に、ライバルが舌を巻くプログラムを消化した。確認のためのインスタレーション・ラップをこなして一端ピットに戻った後、フェッテルが23周、ウェバーが19周のロングランをいきなり敢行、かつ、ともに1分30秒台を記録、特にフェッテルの、抜群に安定したラップタイムが印象的だった。
とはいえ、木曜日の夕刻、フェラーリやマクラーレンに比べて、特にリヤ周りの作業が遅れていたことが気になった。金曜日に、エキゾースト・パイプの搬入が目撃されていることから、ギリギリにパーツを組み込んだ可能性はあるのだが、それでも、RB6の基本的ポテンシャルは、他を圧するレベルにあることは、金曜日のタイムを見る限り、間違いなさそうだ。
◆誰もトラブルでストップしなかった
去年の開幕戦と比べて大きく違うのは、新参チームのトラブルが少なかったということだ。去年の開幕戦では、イスパニアやヴァージンは、走ることがままならない状況だった。しかし今年は、資金難による単純な準備不足から、フリー走行2の終了ギリギリになってやっと”完成”したイスパニアでさえ、リウッツィの手で無事に1周することができた。
F1が、エコを目指して開発費を節約しながらも、大きく進化することを証明した、ということ?!
ザウバーは、ペレスが8番手、可夢偉が15番手でフリー走行2を追えた。二人のタイム差は、1秒ほどあったが、これは可夢偉がレースを睨んだロングラン重視のセッティングを進めていたためと思われる。
ペレスのタイムは、トップから1.25秒落ち。去年序盤は、トップとのタイム差が1.6秒あったことを考えると、ポジション的に去年と変わらないまでも、”そのポジションに比較的楽につけられている”という見方もできる。つまり、上位入賞のチャンスは、去年より高くなった?!
◆ラバーグリップの変化への対応が肝!?
去年までのブリヂストンとピレリ・タイヤが違うことは誰でも知っている。ならば、種類の違うゴムがこすりつけられる路面のコンディションも、当然違うものになる。開幕戦の舞台であるアルバートパークは、公道コースだ。
パーマネント・サーキットに比べて路面の汚れも厳しく、その分、初日と、マシンが走り込んだ2日目はラバーの載りで大きく変化する。公道コースで、その変化は、誰も経験したことがない。