タイヤから見たハンガリーGP
2011年7月28日、ブダペスト
ハンガロリンクはF1カレンダーの中で最も低速なパーマネントサーキットです。スロットル全開時間は1周のうち10秒ほどでしかなく、加えて今週末は断続的に雨になる可能性も高いと予報されており、複雑なレースになりそうです。さらに今年コースは僅かに改修されており、安全上の観点からターン3と8,9のグラベルが舗装のランオフエリアに置き換えられています。
ハンガロリンクはドライバーにとって非常に厳しいレースで、昨年のマーク・ウェバー、2008年のヘイキ・コバライネン、1990年のティエリー・ブーツェンの3人以外の勝者は全て世界チャンピオン経験者です。また、過去にウエットレースは2006年の1度しかありませんが、今年はその記録も塗り替えられそうです。それでは、タイヤから見たハンガロリンクの重要なコーナーをチェックしていきましょう。
サーキットについて:
全長4381mのハンガロリンクは路面がダスティで滑りやすく、通常は気温が高くなりコクピット内が50度以上に達することが特徴です。
ピレリはハンガリーGPにPZeroイエロー・ソフトとPZeroレッド・スーパーソフトを持ち込みましたが、これは非常にスリッパリーで路面のグリップの低さに対応するためです。
ターン2は最もチャレンジングなコーナーのひとつです。2速ギアで僅かに100km/h程度で通過するコーナーですが、コーナーのアウト側の方が低くなっており、アンダーステアが出やすく、コーナーの出口に行くほどそれが酷いのです。さらにコーナー途中にあるバンプに対応しながらクルマを支えるために、右フロントタイヤには大きな仕事が要求されることになります。
サーキットの中盤には、ターン6〜7のシケインを含めて高速コーナーが次々と連続するセクションがあります。ここでは縁石がレーシングラインの一部として活用されます。そのためタイヤには800kg以上もの力がかかり、激しい振動がF1マシンのサスペンションの一部であるタイヤによって受け止められます。
サーキットの終盤は非常に厳しいセクションです。最後から2番目には鋭い左コーナー(ターン13)があり、低速のため発生するダウンフォース量が少なくなって、タイヤのメカニカルグリップでコーナリングしていかねばなりません。
コーナーの入り口でどれだけクルマの向きを変え、出口でエンジンパワーを最大限に活用してトラクションを得られるかは、すべてタイヤコンパウンドにかかっているのです。
ピレリ・テストドライバーのコメント:
ルーカス・ディ・グラッシ:「ハンガロリンクはとてもテクニカルなサーキットで、まさにスーパーソフト・タイヤとソフト・タイヤに打って付けだよ。このサーキットのカギになるのはセクター2だね。どれだけマシンにダウンフォースがあるか、そしてどれだけリズムよく走れるかにかかってくるんだ。5〜6のコーナーが連続していて、ひとつひとつを完璧に通過することがラップタイム短縮のカギになる。タイヤを正確に使えなきゃダメなんだ。本当の意味でオーバーテイクができるのはメインストレートの1箇所だけだね。ハンガロリンクは、モナコに次いで2番目に追い抜きが難しいサーキットなんだ。でも今年はピレリタイヤのおかげで追い抜きも増えているし、事情は変わってくるかもしれないけどね。このサーキットは週末を通してラバーが大幅に乗る傾向にあるけど、雨が降ったらその効果も減ってしまうね。モナコのように、ここでは異例な結果になることもある。特に雨降ればなおさらだと思うよ」
タイヤとF1の排気システム:
常に開発が進みレギュレーションが変わっていくF1のようなスポーツでは、ピレリには最先端の技術が要求されています。ピレリは日々、新たな要求やイノベーションに対応しているのです。
最近では、エンジン排気の位置がエンジニアや車検委員たちの注目を集めています。排気管によって空力効果を生み出すのには様々な手法がありますが、それは同時にリアタイヤにも影響を及ぼしており、局地的な高温のガスへの対応が必要とされているのです。
サイドポッドの前端から排気する前方排気システムが最も効率的な手法だとされています。1000度にもなるエンジン排気がマシン全体に沿って流れてダウンフォースを増大させますが、その排ガスがリアタイヤのショルダーとサイドウォールに達する頃には150度ほどまで下がっているからです。
このような非常に高い温度や様々な温度による負荷がかかっても、タイヤの構造や各部品の作動特性、信頼性に変化はありません。
たとえ極限的なコンディションの下でも、ピレリが誇る安全性、性能、耐久性が限りなく高く保たれていることを証明するものなのです。