ホットライン2011 round12 ベルギーGP
クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとSTINGER編集長が、ベルギーGPの裏舞台をズバリ診断する。
◆F3みたいだった?ザウバーのウイング!
羽端恭一(以下羽端):“盛り上がらなかった”説があるかもしれない(笑)ベルギー・グランプリですが、私はおもしろかったです。
[STINGER]編集長山口正己(以下STG):近年まれに見る面白さだったと思います!!
羽端:ひとつは、ザウバーのチャレンジです。夏休み明けの初戦に、何というか、F3みたいな(笑)小さなウイングを付けてきた。
STG:F3はよかったですね!(爆)。
羽端:何とかクルマを速くしたいということで、そこから生まれた”解”のひとつなんでしょうね。
STG:ですね。でも可夢偉はレース後、”いくらなんでもやりすぎ”と言ってました(笑)。
羽端:ハハハ・・・(笑)。
STG:そういうクルマでも、可夢偉なら乗りこなしてくれる、という期待がチームにある。しかし、可夢偉ご当人にとっては、もうちょっと優しくしてよ、というか(笑)。笑い事じゃないかも、でけすど(笑)。
羽端:そんなウイングで、フリー走行はずっとウェットからハーフウェットだったようなので、ドライバーはたまらなかったと思います(笑)。
STG:決勝レースは結局雨がまったく降らず、天気予報通りでしたが、そのドライ路面でも、”やりすぎ”と可夢偉が言っていたくらいですから、滑りやすいウェットではたまらなかったと思います。
羽端:ドライバーにとっては、可夢偉も言ってたけど、単にダウンフォースがない(少ない)だけのクルマなわけで。
STG:そもそもザウバーC30はそこが問題というか弱点ですからね。ダウンフォースが少ないならコーナリングは負けちゃうので、だからストレートで稼ぐしかない。しかし、ストレートで最も必要な”馬”、まぁ、エンジンパワーですが(笑)が足らない。だからウィングを”軽く”して空気抵抗を極力小さくして、最高速を稼ぎたい、と。
羽端:いくらストレートが遅いとしてもねえ(笑)。まあ、今回のウイングがハズレだったのかアタリだったのかはまだわからないとして、ただ、いまの状態に留まることなく・・・というザウバー・チームの姿勢は評価したいです。
STG:それを含めても、可夢偉は、もうちょっと優しくしていただかないと、タマランです、と(笑)。
◆あのスパを! あのウイングで!
羽端:その可夢偉ですが、低ドラッグだけど、しかしグリップしないというマシン。おそらくクルマはそんな状態になっていたはずで、そんな仕様で”あのスパ”を走る。これは容易なことじゃなかったと思いますが?
STG:よく、オー・ルージュが高速で難しい、という話しがありますが、オー・ルージュも怖いけど、山を登りきった先の下り区間も、なかなかでっせ(笑)。随分前に、レンタカーで走った時に、下りの怖さは、腰が引けまくりまくりマクラーレン(笑)。
羽端:おお! そのオー・ルージュにしたってね、登ったあと、いきなり曲がらないといけないわけでしょ。たまんないコースですよね、スパって。
STG:そう、で、下りになると、イメージとして”止まらない””止まってくれない”という刷り込みができていますからね。実際に、下り区間ではフロント・タイヤ、特に左側に負担がかかる。ダウンフォースがないザウバーは、さらにタイヤを酷使することになって苦しかったと思います。
羽端:しかし、ドライの決勝で、そんな”極端な”仕様のクルマを巧みに操って、一時は4位にまで浮上した。
STG:そんな状態でも、可夢偉は14周を走っている。これは、フォース・インディアの(ポール・)ディ・レスタとともに最多周回数です。
羽端:しかも、スタート直後には、パーツが飛んできた”もらい事故”でクルマを壊してたはずで、そんな状態にもかかわらず──。
STG:スタート直後の1コーナーで、誰かのマシンから外れたウィングのパーツを最初に踏み越えたらしいですから。で、その時に8番手で通過している。12位からスタートなので、すでに4台抜いている。
羽端:あの、ゴルフでね、たとえば5番アイアン一本でコースを回ったら、誰がハイスコアかというようなゲームがあるでしょ。それと同じように、何かしらクルマがカンペキではないというか、ハンディキャップ付きの状態でタイムを競うというゲームが、もしあったら、可夢偉って確実に表彰台なんじゃないかなあ?(笑)
STG:同感!!(笑) しかし、その道具を手にするところから、実は勝負は始まっているので、ナントモですけど(笑)。最初から、ぶっとばすドライバーを持っていない、というような(笑)。
羽端:まあね。でも、そのゲームだと、ジェンソン(・バトン)はあまり強くなさそう?(笑) 案外強いのがルイス(・ハミルトン)で、浮上するのがルーベンス(・バリチェロ)? 最強はフェルナンド(・アロンソ)で、それにセブ(セバスチャン・フェッテルの愛称)とカムイが絡む、とか?
STG:いや、セブちゃんはもっと下じゃないかな。彼は条件が整わないと弱いきがするなぁ。
羽端:あ、そうですね、マーク(・ウェバー)を忘れてた!(笑)
STG:上から行くと、アロンソ-ハミルトン-可夢偉、を推奨(笑)。あとは、(ニコ・)ロズベルグとバリチェロ辺りがしぶといかな。
羽端:まあ、それはともかく。あのウイング、おそらくチームとしてはモンツァも考えての投入だったのではないかと思います。このウイングで鈴鹿はきびしいんじゃないかと可夢偉は言ってましたけどね。
STG:もともと、ダウンフォース不足なわけだけれど、その上、抵抗を減らそうとすると、結局ダウンフォースが減ることになるけれど、高速でも、それなりのダウンフォースが必要、というのが困ったところなワケです(笑)。
羽端:もちろん、可夢偉が感じてるザウバーの”遅さ”というのは、エンジンのチカラのなさであって、それはウイングでは解消できないというのは、彼の指摘の通りでしょう。でも、ハナシは戻るけど、チームとして、何もしないよりは何かした方がずっといいわけで──。
STG:確かに。しかし、ドライバー頼みになりすぎというのでは、可夢偉もたまったもんじゃない。タマランといいながら、また、やっちゃうからさらに期待が上がるわけで、能力がありすぎるのも問題だったりして(笑)。
羽端:今回のスパでの決勝、ウイングの”ドライ・テスト”を踏まえて、次のモンツァでは、可夢偉にとって”いい方向”に、クルマがディベロプメントされて行けばいいなと思います。
STG:ですね。そのあたりの整合性は、スパの後のミーティングで議論されたようです。