ホットライン2011 round14 シンガポールGP
クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとSTINGER編集長が、シンガポールGPの裏舞台をズバリ診断する。
◆アジアの”夜祭り”、そのエンディングは・・・?
羽端恭一(以下羽端):今回は、”出遅れマーク”(・ウェバー)の、表彰台意地でもゲットの鬼走り!と、”最強プリンス”セブ(セバスチャン・フェッテル)のポールからの完全勝利! シンガポールもやっぱり”レッドブルの週末”だったね!というストーリーでした。
[STINGER]編集長山口正己(以下STG):ですね。
羽端:・・・以上!(笑)
STG:ははは(笑)。しかし、前々から言ってるように、レースで面白いのはスタートだけ、そこで8割りは終わり(笑)。今回は、特にそうでた。
羽端:特に、というのは?
STG:スタートが夜じゃないですか。だから、夜祭の高揚感というか、えも言われぬハイテンションになるんです。夏祭で、花火大会を待つ心境って感じで。
羽端:おお! ”夜”がテーマというか、暗いということが重要なテイストになっている祭りってありますよね。秩父の夜祭りとか。あ、行ったことはないけど(笑)。
STG:同じ公道コースでも、モナコはまた違った意味での高揚感がある。コースの中程のカジノコーナー辺りにいて木曜日の走行が始まると、ビルにこだましながら近づいてくるエンジン音がタマランのです!
羽端:うんうん!
STG:それはある意味リスキーで”危なっかしいコース”の特徴かも。佐藤琢磨が前の方にいるインディカーのスタートも似たような気分になります(笑)。
羽端:ああ、その感じね。琢磨がソコに、というのがビミョーに”萌え”で(笑)。
STG:で、シンガポールは、そこに”夜の帳(とばり)”という特別なシチュエーションが加わるから、高揚感は圧倒的なんですよ。
羽端::フーム、そういう”祭り”であったか!
STG:確かにそうだけど、そういうレースであることをテレビでもっとちゃんと伝えてくれればなぁ、と思います。そうすれば、少なくとも次からはそういう構えでシンガポールGPのテレビを観るから、いまより、退屈さは間違いなく減ると思いますよ。
羽端:そういう各国のグランプリ独自の表情をちゃんと伝えるというのは重要ですよね。ウム、そういう観点で、今度から「シンガポール」を観ることにしましょう。
STG:是非。
羽端:ところでセブは今回、普通のサムアップ(親指を立てる)に、ウイニング・サインを変えたみたいね? 画面に映っていた範囲では(※シンガポールでも人差し指サインは健在です)。このページを読んでいたのかな?(笑)
STG:あ、読んでるよ、って言われました。
羽端:へっ?
STG:ウソウソ(笑)。サムアップやガッツポーズはそれぞれで面白いですね。アイルトン・セナは、拳が絶対に自分の方を向いていた気がするし。フェッテルも、人指し指の立て方が特徴ありすね。
羽端:無精ヒゲはどうだった? テレビ経由では、ヒゲの感じってよくわからないんだけど?
STG:鼻の下がレレレのオジサンみたいなのが気になってます(笑)。なんか貧相な気がする。しかし、あれが可愛い、という意見もあるかもしれないので、ナントモですけど(笑)。
羽端:セブっておそらく、自分がレーサーとしては、顔が”プリティーでありすぎる”(笑)ことがイヤなんだね。「顔つき」は自分の責任だけど、「顔立ち」というのは生まれつきのものだから、しょうがないんだけど。でも、おそらくそれが彼の”逆コンプレックス”になってる。美男はツラいよ、です。だから、せめてヒゲでと、キタナくしてるんだ(笑)。
STG:いや、本人が気付いてないだけで、誰かも指摘しにくい状況だけだと思いますけど(笑)。好みでしょうけど、顔だちは、あまり好きじゃないなぁ。チャンピオンになる前の方が可愛かった、って評論家になっちゃってるけど(笑)。
羽端:あと、前を突っつき損ねて、ひとりで”飛んでった”某ベテラン・ドライバーについては、今回はあえてコメントしません(笑)。いつも同じようなことを言ってるような気がするので。
STG:シューマッ、いや、あの方も、独特の高揚感にやられた口と思います。ハミルトンもね。
羽端:ひと言だけ。下位チームのドライバーによる”自爆”的なコースアウトなんかは、まあ仕方がないという部分もあるんだろうけど、”真ん中より前”を走っているような”有力どころ”で、他車と絡んでは、加害者になったり被害者になったりしているというドライバーは「二人」しかいません。
STG:ですね。でも、それ、ギリギリを走っているから、という見方もできると思います。
羽
端:「二人」以外は、みんな、競り合いながらも”寸止め”で、他車とは触れあうことなく、攻めたり守ったりしてます。そこに、F1ドライバーの凄さがある。それが世界最高レベルのレースにおける美しきファンタジーでもあるでしょう。でも、実際にぶつかっちゃったら、それは単に泥臭い事件でしかない。”寸止め”ができないのだとしたら──。
STG:ハミルトンもシューマッハもやりすぎは確かだし、ここでも私は、擁護はしないけれど、キャラとしてあり、と思います(笑)。
シューマッハの場合、前を行くペレスは、タイヤがヘロヘロになっていたので、ブレーキングが慎重になる。シューマッハは全開で攻めたてているから、ブレーキング・ポイントはおのずとズレて。その微妙な差が、今回調子がよかったメルセデスのオジサンは、追い越したい一心。だからぶつかった。
羽端:・・・以上!(笑)
STG:(笑)。
羽端:・・・いま、口にチャックをしました(笑)。
STG:私は耳栓だ(笑)。
◆シンガポールを”パス”しても鈴鹿で、というザウバー
羽端:可夢偉は、何というか、歯車がうまく回りませんね、このところ。
STG:まったく。こういう時もある、これがレースですから、って可夢偉は言うけど、さすがにイタリアと今回は凹んでましたね。
羽端:ただ、ペレスのポジションなんかを見ていても、トップ2チームとアロンソ、これで「5台」ですが、それにつづく「6位」を争うようなところに、いまザウバーがいることは確かなようで?
STG:いや、メルセデスGPが上でしょう。可夢偉自身、行けても8番手、と言っている。
羽端:そうか、トップスリー+メルセデスね。・・・で、最近、そこに割り込んできたのがフォース・インディア? 可夢偉、けっこう気にしてますよね、ここを。
STG:フォース・インディアは、去年までブリヂストンにいた松崎(淳)さんが、タイヤエンジニアとして活躍している。後半の伸びは、彼の手柄と言っていいと思います。でも。
羽端:でも?
STG:そのおかげで可夢偉のポジションが下がる(笑)。ザウバーにはタイヤを専門に観るエンジニアがいない。マクラーレンの今井(弘)さんもブリヂストン出身なので、浜島さんに、一肌脱いでください、と提案したら笑ってました。
羽端:その上で、ザウバーは「戦略」をハズしまくっていると可夢偉は──。
STG:タイヤ・エンジニアが要るチームといないチーム。そこが問題ですね。
羽端:そうか・・・。ただ、鈴鹿はコース自体が”多様”というか戦略的というか、いろんなことができる/起こるような、そんなコースだと思うので、可夢偉のドライバーとしての「クリエイティビティ」に期待します。
STG:確かに。それに、今回、テクニカル・ディレクターのジェームス・キーが欠席している。シンガポールをパスしても、鈴鹿用アップデートの開発に力を入れている、という解釈をすれば、鈴鹿が待ち遠しくなるる、ってことで(笑)。
羽端:ぜひ、去年以上のパフォーマンスとリザルトを!
STG:いや、高望みはしないで(笑)。とにかく”いいレース”をして、結果が付いてくることを期待したいです。