タイヤから見た韓国GP
2011年10月13日、木浦
韓国のヨンアムサーキットは、昨年からF1の開催地となりました。昨年のF1以降使用されていないため、今週末、ドライバーたちは、自身およびタイヤにも厳しい滑りやすい路面状態に直面すると思われます。
それでは、全長5,615m のヨンアムサーキットの特徴について見ていきましょう。
サーキットについて:
スタート後の最初のブレーキングエリアは、タイヤに最大5Gにも及ぶ大きな減速を課します。その後、サーキットの流れるようなセクションでは、クルマは約260km/hのスピードで走ります。高速S字は、先週の鈴鹿と同様、タイヤに非常に大きな負荷となる、4.5Gの横荷重を生み出します。
ドライバーは、コーナーを抜ける際、最速ラインを走るために、しばしば縁石を使用します。タイヤの構造に厳しい縁石上を走る時、タイヤは、800kgの垂直荷重によって圧しつけられています。すなわち、タイヤは、上下両方からの大きなプレッシャーの下にさらされることになるのです。
ターン11は、ヨンアムサーキットの中で最も厳しいコーナーのひとつです。ここは、高速で走行する大きな半径のコーナーです。特に、粘着性の高いスーパーソフト・タイヤは、グリップを高め、ドライバーが最適なターンインと理想的なラインの維持を行う上で効果的な働きをするでしょう。
最終セクションは、再び完璧なレーシングラインを維持することが不可欠な連続コーナーによって構成されています。ここでは、タイヤの表面温度は120℃にまで上昇します。
ラップの最後には、ドライバーが最も集中力を必要とする、難しい2つのワイドな左回りコーナーが待ち受けます。コーナー出口でアンダーステアを抑制するために、フロントタイヤは最高のグリップを提供しなければなりません。ここを抜けると、スタートフィニッシュストレートへ戻ります。
グレイニングについて:
滑りやすいサーキット-特にGP週末序盤の金曜日-において、タイヤにとって最も重要な課題の一つは、グレイニングと言えるでしょう。ピレリのPZeroコンパウンドは、耐グレイニングが高いことを示しているものの、昨年、韓国ではグレイニングがタイヤにとっての課題となっていました。
グレイニングは、コーナリングの際、タイヤがグリップを維持できず、スライドする時に発生します。路面に対して横向きの摩耗は、波のようにトレッドパターン上に粒状のささくれを生成し、グリップを低下させます。ささくれは、徐々に摩耗して、いずれは容易に認識できるディンプルのような跡が残ります。
グレイニング発生には、たくさんの異なる理由があり得ます。バランスを欠いたセットアップは、過剰なアンダーステアを生み出し、結果としてのスライドが、最も一般的なフロントタイヤのグレイニング発生の原因と言えます。
グレイニングは、タイヤに完全に熱が入る前に、ハードに使用した場合にも発生します。もし、タイヤが適正な作動温度領域(90℃程度)まで温まっていない場合、ラバーの粘着性が弱いため、グリップは低下します。このため、クルマはスライドして、トレッド表面にグレイニングが発生するのです。
低い路面温度は、グレイニングを発生させる、もうひとつの一般的な要素です。路面温度が低いほど、タイヤのウォームアップには時間がかかります。したがって、スムースなアウトラップ走行がとても重要になるのです。一般的に言えば、ソフト・タイヤもスーパーソフト・タイヤも、1週以内に理想的な作動温度領域へ到達します。