F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

鈴鹿でタイトルが決まった。しかし、F1は”終わりなき戦い”。翌週の韓国GPでは、また別の展開が見えるはずだ。ブリヂストンタイヤとともに14年間、F1を直近で見つめたハミーこと浜島裕英エンジニアの視線で迫る、”タイヤからみた韓国GPの見どころ！

[STINGER]-山口正己（以下STG）：タイトルは決まってしまいました。
浜島裕英ブリヂストンタイヤ開発第2本部フェロー（以下、浜島）：ですね。

STG：しかし、F1は終わりなき戦いですから、のんびりしているわけにいかない（笑）。
浜島：重要。そのとおりですね！　チャンピオンシップ決まってからでも戦う、というのがF1ですから。

去年も、最終戦のアブダビGPで、逆転されていたセバスチャン・フェッテルが諦めていなかったでしょ。これは案外重要な要素と思います。セブ（S.フェッテル）が絶体絶命だったけれど、勝ったことで活路を見いだした。チャンピオンを取ることに重きをおいたら、違う展開になったかもしれないですね。今回の鈴鹿も、最終ラップも手を抜かないで、結果として3等賞でチャンピオンになった。積極的にいかなかったら、バトンに圧倒されたかもしれないですね。

STG：しかし、プッシュすると、リスクが増えるわけで、なかなか難しいですね。
浜島：バランスの問題ですかね。その辺り、フェルナンド（･アロンソ）の取り方は少し違うかも。フェルナンドは頭がいいから、守りに入って割り切って、というスタイル。マイケル（･シューマッハ）は、連勝の勢いで頑張っていた。

STG：M.シューマッハ時代は、もっと早く決まったことがありました。
浜島：タイトルを早く決めたときも、その後のレースで勝っていますね。タイトルももちろん大事だけれど、1戦1戦勝つことが励みになるんじゃないかな。

STG：チームも、勝つことに執念をもやしている。
浜島：ですね。それがF1チーム、ということじゃないでしょうか。

STG：さて、韓国GPです。去年、開催に向けていろいろ言われましたが、レースはできた。
浜島:カマボコシケインがタイヤに厳しいと思います。去年は雨だったけれど、ドライだったら特にリヤタイヤの磨耗面で、厳しいコースだと思います。

STG：シケインが蒲鉾型だとどんな影響があるんですか?
浜島:リヤタイヤの外側が変な磨耗をするんです。通常ならイン側がささくれるけれど、センターから外がささくれて、グリップダウンにつながります。セッティング的にも、その辺りが肝になると思います。

STG:雨で日没ギリギリでライトが必要とか言われましたが。
浜島:日没になった場合、タイヤ的な心配といえば、日が落ちると温度がどんどん下がるので、場合によっては気温が低すぎてタイヤが作動しなくなることも考えれられます。特に硬い方のタイヤの使い方を考えないといけないですね。

でも、去年は、セーフティ･カーでスタートが遅れて、中断もしたりでそれで日没になったけれど、今年は、天気はどうなんでしょう。

STG：金曜日が降水確率90％で、土曜日と日曜日は雨は降らない、という天気予報のようです。
浜島：だったらドライになればその心配はないですね。でも、ドライだと、カマボコシケインに対して対応しなければならなくなると思います。

STG：韓国国際サーキットの特徴は?
浜島:コース自体はいいコースだと思いますよ。面白いコースですね。ストレートのあとに、間口が広くて確実に抜けるコーナーもあるし。

STG：鈴鹿のようなS字がありますが。
浜島：スピードが遅いのでそんなに厳しくないですね。リヤに厳しいのは、2コーナー先のストレートを抜けて、折り返してシケイン、逆バンクと続く辺りかな。セッティングのキモになると思います。そこをうまく決めないと、次のハイスピード区間で車速が乗らない。

STG：明日は雨の予報ですが、土曜日と日曜日はドライなので、明日はあまり走らないのではないかといわれています。
浜島：雨が降ると、1コーナー先のストレートの水はけが去年はよくなかったですね。それがあったので、去年はセーフティ･カーなかなか引っ込められなかった。

STG：すでに去年のデータはあるとはいえ、タイヤが変わって、その前にマシンも違う。金曜日に走れないというのは、チームにとって痛いと思いますが。
浜島:データはほしいでしょうが、全チームがイコール･コンディションですから。そうなると、どこに絞ってセッティングを進めるか、その精度が問題になりますね。

STG:コース･レイアウトなどから、強そうなチームは?
浜島:う〜ん、マクラーレンは、ストレート長いのでいいかもしれないですね。

STG：メルセデスのエンジンパワーが武器になる。フェラーリはどうでしょうか。
浜島：フェラーリは、どうだろう?　後半のクネクネは速そうですね。

STG：韓国GPは、どんなところに注目してレースをご覧になりますか?
浜島：リヤタイヤの磨耗が気になります。

STG：ではそこに注目して週末を見てみます。ありがとうございました。
浜島：こちらこそ！