メルセデスAMGのレース・プレビュー2012 レギュレーション
新しいシーズンの開幕には、必ず多少のレギュレーション変更が伴う。2012年の変更点は比較的わずかだが、その影響でF1マシンの外観は大きく様変わりすることとなった。また、レースの内容と結果にも変化をもたらすかもしれない。2012年の競技規則および車両既定に加えられた変更の要点は以下のとおり。
■競技規則
・レースの最長時間制限 5条3項 4時間を超えてレースを継続しない。昨年のカナダGPは4時間4分39秒537だった。ただし、実際にレーススピードで走行していた時間は57分10秒ほどにすぎない。
・ドライバーのマナー 20条2項および3項 ドライバーは正当な理由なしにコースを離れてはならない。また、後続車両を抑える走行の制限が条文化された。ドライバーは1回以上進路を変更してはならず、通常のラインに戻るときは車両とコースの端までにマシン1台分以上の間隔を残さなければならない。
・クラッシュ・テスト 22条2項 チームはテストを開始するまでにクラッシュ・テストを完了しなければならない。従来は最初のレースまででよかった。
・シーズン中のテスト 22条4項(1) 5月1日から3日まで、ムジェロで3日間のテストがおこなわれる。開幕前のテストにおいて、メルセデスAMGペトロナスは1日当たりの走行距離が全チームの中で最長だった。F1 W03は平均して1日472㎞の走行距離を記録している。9日間のトータルは4,250㎞。ほかに撮影のため200㎞走っており、その間コース上に
マシンが止まったのは2回だけだった。
・クルーの制限免除 30条19項 ケータリング、プロモーション、メディア担当のクルーは、夜間作業の制限を免除される。
・セーフティ・カーに関する新規定 40条12項 安全と認められた場合、周回遅れのマシンはセーフティ・カーが出ている間に周回数の多いマシンを追い越すことができるようになった。これによって各車は順位どおりに並ぶこととなり、再開のたびに周回遅れの影響を受けることなくレースが展開される。2011年のシンガポールGPでは、セバスチャン・フェッテルが周回遅れの介在に助けられ、2位のジェンソン・バトンを1周で9秒も引き離す場面が見られた。2011年には7レースで合計12回セーフティ・カーが出た。2010年の場合は12レース、21回だった。
■車両規定
・ノーズ高の引き下げ 3条7項9 「コクピット開口部後端より1950mm以上前方のボディ部分は、高さが基準線から550mmを超えてはならない」。この、一見まわりくどい表現は、車高制限がこれまでどおり基準線から625mmとされているため、2012年のF1マシンに特徴的なステップノーズの形状を決定づけている。
・許容誤差の縮小 2条12項6 空力パーツに関して許容される製造上の誤差が、従来の5㎜から3㎜へと40パーセント縮小された。
・スロットルとエキゾーストの働き 5条5,6,7,8項 スロットル、エンジントルクの影響、エキゾースト後端に関する規定は実に954ワードという長さに及んでいる。2011年に用いられていた同項目、89ワードの実に10倍以上となっており、いわゆるブロー・ディフューザーの禁止がいかに複雑かを物語っている。
・荷重テストの追加 18条9項2 横方向の衝撃を緩和する構造物に、新しく垂直荷重テストが追加され、FIAの車両認定を受けるのに必要な荷重および衝撃テストは合計18項目となった。