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ホンダF1復帰特別会見全録1/4

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『秋口にエンジンが回り始める』

ホンダF1第四期と呼ぶべき2015年のF1復帰に対して、今回のプロジェクトの責任者である新井康久本田技術研究所取締役が、復帰にかける意気込みを語った。

5月16日に行なわれたF1復帰会見からほぼ1カ月、マクラーレンとの契約を済ませ、1年半後にデビューを控えた”次世代パワーユニット”の進捗状況を含め、復帰に向けてのアウトラインが見えてきた。

新井康久取締役本田技術研究所は、まず、「燃費性能と、運動性能の両立を重視した次世代技術の結集であり、レース活動と、市販車開発の連携を通じて、技術のホンダを世界に示したいと思っています。そして、新しい、新時代のホンダ・サウンドを轟かせるべく、これら開発を加速して参ります。是非期待していただきたいと思います」とあいさつし、佐藤英夫モータースポーツ部長を伴って質疑応答に臨んだ。

以下、会見の全録をお届けする。

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来年用として、すでに発表されているルノー・エンジン。
ホンダは2015年デビューに向けて、秋口に姿を表す予定。       
Photo by Renault Sport SAS

◆エンジンに火が入るのは秋口
—-エンジン開発は、どのくらいのフェイズまで進んでいますか?
新井康久取締役本田技術研究所(以下、新井):先日の発表から1か月ですが、基本的な設計をスタートしたばかりですので、これからといったところです。まだ形も見えませんし、いまは、どういうレイアウトにしようか、基本的なところを検討しているところで、”これから”ということろです。

—-デザインのキーポイントと、完成の時期などについてお願いします。
新井:今回のレギュレーションが、エンジンだけではなく、排気熱の回収、それから機械的な回生システムが組み合わさってきますので、同時に並行して進めていかないと、日程的にも厳しい。そうはいっても、エンジンをちゃんとやらなけばならない、ということで、いま、レギュレーションの中で最大限の性能が出るように、エンジンのレイアウトを細かく詰めている最中です。

エンジンに火が入って回りだすのは、秋口くらいかな、と。同時にいろんなシステムをやっていますが、それぞれの技術的な難易度がまちまちなので、すべてがパワーユニットとしてそろうのはもう少し先だと思います。

また、実車テストですが、昨今のF1は、テストが制限されていますし、クルマでやるよりも、もっと効率のいいベンチで進めた方が、性能の見極めも効率よくできる、ということで、ベンチ主体のテストが主流だと、いまは考えています。

—-今回は、エンジンだけでなく、パワーユニット全体を、ということで、すでに運動回生エネルギーはKERS(カーズ=Kinetic Energy Recovery Systemの略)で、コンビを組むマクラーレンも使っています。それとは別に、新しく熱回生の部分がありますが、回生の部分については、どこまでをホンダが担当するのでしょうか。
新井:まず、エンジンを含んで、回生の全体は我々が担当します。KERS、それからMGU-H(編集部注:モーター・ジェネレート・ユニット-ヒート=排気の熱エネルギーを電気エネルギーに変換する)と言われている排熱回収のシステム、それから電気を溜める蓄電のシステムを含めて、パワーユニットとしてホンダの担当で開発していきます。

KERSについて付け加えると、いままでのKERSと(2014年からのレギュレーションでは)は、エネルギーの量で10倍くらい違う(10倍になる)ので、使い方も含めて、まっさらの状況で、この辺が、新しいレギュレーションのいいところだと思っています。同時に、難易度が高くて、いかに効率よくエネルギーを使って速く走らせるか、というとことだと思います。

—-MGUHとコンプレッサーやターボも含む同軸に置かれるユニットですが、モータージェネレートユニットも自社開発ということになりますか?
新井:まず、回転数が相当高いのは事実ですが、回転の規制がありますので、今のレギュレーションでいくと、10万5千回転ということなので、中途半端に高回転と思うのですが、そこもひとつ技術的には難しいかな、と(笑)。そこにターボを組み合わせると、ターボにしては(回転が)微妙に低いかもしれないし、ジェネレーターにしては高すぎるかな、と。そこが、難しいと思います。

もちろん、協力していただくサプライヤー、名前は控えさせていただきますが、そこと協力してやっていきます。

—-来年からのF1エンジンと同じ直噴ターボ・エンジンは、来年から国内でも、スーパーGTとスーパーフォーミュラでも使い始めますが、燃焼マネージメントとエネルギーマネージメントをしています。来月から、テストエンジンが走り出すとのことですが、その技術とF1用の技術の相互関係はありますか?
新井:直噴ターボという意味では基本的なコンセプトは同じですが、ただ、エンジンのボワなどが違いますので、燃焼の細かなコンセプトとして、設計とかは違いますが、基本的なコンセプトは踏襲していますし、共通することは非常に多いです。開発チーム間で技術交流は、蜜にやっていきます。分けてやっても意味がないので、共通要素をシェアしあってやっていきます。

◆体制と欧州拠点
—-今回のホンダF1第4期のプロジェクトリーダーは、新井さんという解釈でよろしいですか?
新井:プロジェクトリーダーという言い方が正しいかどうかわかりませんが、今回のF1参戦の責任者は、私が務めさせていただきます。現地でのいわゆる”監督”は誰か、とか、ダイレクターは誰かとか、言うことになりますと、参戦体制は、もう少し時間をかけて決めていきたいと思いますが、現時点で言うと、私がF1の責任者と考えていただいていいと思います。

—-ヨ
ーロッパに拠点を構えなければならないと思いますが、そのあたりはどうお考えですか?
新井:開発は日本でやりますが、現場の中心は、半分はヨーロッパですから、拠点の準備をしなければならないと思って、いくつかいま考えているところです。

—-コンサルタントとして、ジル・シモンさんがいますが、今後、どんな立場になるのでしょうか?
新井:コンサルティングを受けていて、実際に、レギュレーションの細かい部分の理解とか、手助けをしていただいています。ただ、社内にいるのではないか、という話もありますが(笑)、研究所の中で仕事をしているわけではありません。ミーティングで、いろいろ情報交換をさせていただいています。(彼は)FIAで(2014年からの)レギュレーションを創っていったこともありますので、そういう意味では、なぜ、このレギュレーションができたのかとか、ということを理解する意味でも、ミーティングを持っています。

—-FIAの技術部会に、過去長い間、ホンダ関係者が参加していないと聞いていますが、そうだとしたら、その理由をお聞かせください。
佐藤英夫モータースポーツ部長(以下、佐藤):仰る通りですが、参戦を表明しましたので、今後は出席していく予定です。

◆日本人ドライバーの可能性
—-開発リソースについてですが、今回のプロジェクトに関わっている人数はどれくらいでしょうか? 前回に比べての割合でもいいのですが。
新井:ズバリ、言いたいところですが、数字は控えたいと思いますが、前回に比べると参戦の形態が大分違いますので、それなりの規模に少なくなっています。ただ、パワーユニットというと、エンジン以外の部分があるのでそこで差し引きがありますが、基本的には少なくなっています。

—-コンピュータの制御が大切になってくると思いますが、ECU(エンジン・コントロール・ユニット)については?
新井:今の段階では、エンジン用のECUは、供給されるものを使いますが、それはレギュレーションがどう動いていくか、ということです。他のコントローラーは、自分たちで作らなければならないものもあります。どこまでやるかは、これからですね。今のレギュレーションがどこまで続くかも分らないのでそういう意味では開発は大変かな、と思います。

—-ドライバーについて、日本人が可能性といいますか、希望についてどのようにお考えですか?
佐藤:ドライバーの決定につきましては、マクラーレンと話し合いをしながら決めていくと思っています。日本人ドライバーということですが、マクラーレンもホンダも、勝つことを最大の目標としていますので、勝つことを目標とした体制を考えています。その中の(要素の)ひとつがドライバーである、という考え方です。ですから、ホンダとしては、日本人ドライバーが乗ってほしい、という希望は持っていますが、候補として日本人ドライバーの名前が上がってくることを期待したいです。

—-現在行なっているドライバー育成システムをここからさらに変化させる予定はありますか?
佐藤:この時点で大きく変えていくものはありませんが、部分的に修正しながら、ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクトがもう少しF1に続くようなものを考えていきたいと思います。

photo by  [STINGER]
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