タイヤバースト事件が気になる-その2:なぜ回転方向を変えたのか
(その1からつづく)
その1:回転方向とタイヤ性能
その2:なぜ回転方向を変えたのか
その3:トレッド剥離とバーストは別問題
その4:チームは言うことを聞かない?
◆なぜ回転方向を変えたかったのか
ひとつ勘違いがあったかもしれない。使用する回転方向を変えるためには、ひとつは、左右を変える方法もある。たしかに、コースによって、どちらか片方の磨耗が激しくなることはある。左右を変えれば、その磨耗を均等にできる。市販車でいうローティションを左右で行なうことで、全体寿命を長くできないこともない。
しかし、もうひとつ、回転方向を変える方法として、ホイールに装着し直して、同じ場所に着けることも考えられる。 左右輪を入れ替えるだけだと、それぞれのタイヤの外側はあくまで外側なので、着け替える意味が半減する。
ただし、通常、チームは、ホイールにタイヤを嵌めるタイヤチェンジャーは持っていないはず。この作業にピレリが加担したのなら、ピレリは言い逃れができなくなるが、どうだったのか、現段階では定かではない。
回転方向を守ってくれれば壊れない。
ところで、なぜ、逆回転で使ったのかというテクノロジー的な考え方が気になるが、哀しいことに、なんともハイクォリティなF1的ではない理由からだった。”片方が減るので、反対側が使える”からだというのだ!! パンツが汚れたので、裏返してもう一度履く、ような、なんともケチな話。もっとも、限られた本数しか与えられないタイヤを、いかに効率よく使っていくかを徹底的に追求した結果、といえば聞こえはいいけれど。
ともあれ、あらゆる可能性を試す、という意味で、F1はここでもF1であった、という考え方もできる。ある意味”なんでもあり”。逆に言えば、そうしてトコトン突き詰めるのがF1村の住人のマインドであり、それはそれで素晴らしいことだ。だが、タイヤが壊れてクラッシュしたり、破片が飛び散って後続のドライバーに当たったり、という最悪の事態にならなかったのは不幸中の幸い。
モーターレーシングの基本は、それぞれが自戒の念をもって行動することだが、チームをFIAがコントロールし、かつタイヤメーカーとしてのピレリの毅然とした対応が望まれるところだ。
(その3につづく)
[STINGER]山口正己