改めて”可夢偉のクラッシュ”を分析する
悪条件が重なった。
◆モスクワのシティ・レーシングでクラッシュした可夢偉。ウェット路面でコントロールを失った結果とのことだったが、不安定な場面での回避能力の高さは抜群なはず。イベント後にカスペルスキー社長にクラッシュしたノーズをプレゼントした周到さからして、”もしかして、プロモーションのためにわざとぶつけたのではないか”、との憶測もあった。
◆だが、走りの専門家であるオリジナルボックスの国政久郎代表は、ビデオを観て、”単純なハイドロプレーンだと思います”と結論付け、状況を以下のように分析した。
“路面の凸凹が影響して右リヤ・タイアが凸の部分に乗り、左タイアが浮いて駆動のバランスが崩れて右タイアだけの駆動になった。すると車は左に向きを変える、それに反応して可夢偉はステアリングを右に切った”。
“そこで左タイヤがグリップしてくれれば良かったけれど、左タイヤが着地した所が水の上、それも運悪くアクセルを強く開けた直後だった。結果として、小さなフェイント・モーションになった形になり、カウンターステアを切っている方向(進行方向右)にマシンが向いてクラッシュした”。
“現在のF1は、大きなダウンフォースを受けた時に、シッカリと車高を保つ足だから、ダウンフォースのかかっていない低速では、ちょっとした凸凹で、凹側の路面に乗った車輪が浮いてしまう。サスペンションがないカートと同じと思えば分かりやすいですね”。
“観客サービスでアクセルの空ぶかしはしていたけれど、あれだけ慎重に走らせているのだから運が無かったとしか言いようがないでしょう”。
◆通常のクルマであれば、路面の凹凸に合わせて、タイヤが路面に追従する。しかし、F1は、左右のタイヤが1本のロッドでつながれたカートのような状態になり、凸側に乗ったタイヤに釣られる形で持ち上がった凹側のタイヤは浮いてしまう。
◆そこに雨という路面条件が加わり、結果として可夢偉の鋭い反射神経が仇になった形だが、アクシデントの後に、ロシアのスポンサーであるカスペルスキーの社長に、クラッシュしたノーズをプレゼントしたフェラーリF1チームの反射神経は、実に的確だった。
Photo by Ferrari S.p.A
[STINGER]山口正己