可夢偉が語るケータハム・セブン160、そしてF1開幕戦
「騙されたと思って乗ってください!!」
3月10日、開幕戦のオーストラリアGPを前に、ケータハムは、本業の市販車の新車を発表した。スズキの6600ccエンジンを積むセブン160である。発表会が行なわれたイギリス大使館を訪れた小林可夢偉に、軽規格の本格スポーツカーと、開幕戦の予測を訊いた。
◆思わずニヤニヤしてしまった。
—-ケータハム・セブン160はどうでしたか?
可夢偉:シルバーストン・サーキットで乗りました。今日発表された最もローパワーの160と一番パワフルなモデルです。今日発表された160は、小さいけれど、運転した感覚は、非常に気持ちがよくて、走りながら自然とニヤニヤしてしまいました。それに、エンジンパワーと、軽さ、これは久々にワクワクしましたね。
—-気持ちがよかった、というのは、具体的に、ハンドリングがどうだったのですか? 自然にニヤニヤしてしまったのは、どんな感覚だったのでしょう?
◆勝手にドリフトします!!
可夢偉:いまの一般車は、ABSだったりトラクションコントロール的なものがあって、電子制御でほとんどクルマがコントロールされている、というのが最近の一般的な自動車の姿ですが、このケータハムは、笑うくらい(そういう電子装置が)なんにもないです(笑)。だから、勝手にドリフトできます。いま、そんなクルマ、ないですよね。ハンドリングとかじゃなくて、本当に、クルマだなぁ、と感じます。いまのクルマは、なんというか、単なる移動手段だけだと思うんですが、ケータハムは、これがクルマだな、と正直に感じたので、自然と笑顔になるし、いまのクルマは、ドライバーがクルマをコントロールするのではなくて、クルマがドライバーをコントロールしているような状況ですが、このケータハムは、ドライバーがクルマをコントロールしているという気分がよく味わえます。この時代にあって、こういうクルマがあることを凄く誇りに思います。騙されたと思って、乗っていただきたいと思います(笑)。
—-一般道でも?
可夢偉:特にサーキットで走れたら楽しいと思いますが、街中でゆっくりでも楽しめると思います。
—-F1より面白いですか?
可夢偉:いや、F1の方が全然、面白いです(笑)。
—-F1に乗れない我々にはこっちの方が面白そうです(笑)。
可夢偉:F1は、運転することも大変だけれど、クルマを、開発したりすること、相性のいい頭がいいエンジニアと一緒に働ける、ということが一番の誇りなので、いま言う”クルマを楽しめる”という観点から、純粋に楽しめる、という意味では、F1より楽しいかもしないですね。
◆パワーがない分、怖さがない
—-一番ハイパワーのセブンとローパワーのセブンに乗られたとのことですが、今回、ローパワーの楽しさはどうでしょうか?
可夢偉:分かりやすく言わせていただけると、ぶっちゃけ、簡単に乗れるのは、確実にこの小さい方の160ですね。なぜかというと、パワーがない分、なんというか怖さがないんですね。でも、エンジンのパワーが増えると、恐怖感が出て来ると思うんですけど、そういう意味では、160は、誰が乗っても、雨でも楽しく、いや雨が降ったら、屋根がないから困りますが(笑)、要はどんな状態でも楽しめると思います。
—-ハイパワーの620は?
可夢偉:パワーが凄くあるんで、ボクらは、パワーをコントロールして先が読めるですけど、プロではない人が乗ると、どこかで恐怖感が出て来ると思うんですが、サーキット・コースで乗ると、ハイパワーの方が楽しめると思います。ただ、(軽自動車の小さなエンジンを積んだ)160は、コースでも楽しめるし、町でも楽しめる。パフォーマンスではなくて、クルマの純粋な動きを楽しめると思います。
—-世界各国を巡っていると思いますが、今回発表されたクルマで走りたい道はありますか?
可夢偉:正直、どこでもいいですね。あんなユニークなクルマはあまりないので、非常に目立つと思うんですよ。なので、隣に女の子と一緒に乗って、それを楽しめる女の子がいたらいいですね。昔は、クルマってかっこいいんだ、といイメージがあったと思うんです、女の子にモテるとか、シンプルな要素があったと思うんです。また、そういう時代がやってくることが、僕は楽しさと思うので、どこを走るというよりも、このクルマでデートに行こうと言って女の子が喜んでくれる時代がきたらいいな、と思います。
◆さて、開幕戦は?
—-今年は、メルセデスのパワーユニットが調子がよくて、可夢偉さんが乗るルノーの調子がイマイチですが、そのルノーを積むチームの中では、ケータハムはテストで距離も走れているようで、さきほどクルマを作り上げていく楽しみ、という話がありましたが、実際、開幕戦の完走率が相当低くなると思うのですが、その辺りをどう考えていますか?
可夢偉:ボクは、完走率が低くなるとは思っていないんです。走れないとはいっても、ボクらもモーターレース・ディスタンス(決勝レ
ースで走る距離)を走れたし、他のチーム、特にメルセデスなんて、初日から160周走ったりしているので、あまり期待されても、というのが正直なところです。できればみんな完走して、本当のパフォーマンスでレースをしたいと思います。レース前にそれ(他がつぶれること)を期待していたらダメだと思います。
ースで走る距離)を走れたし、他のチーム、特にメルセデスなんて、初日から160周走ったりしているので、あまり期待されても、というのが正直なところです。できればみんな完走して、本当のパフォーマンスでレースをしたいと思います。レース前にそれ(他がつぶれること)を期待していたらダメだと思います。
photo by Ceteram
[STINGER]山口正己