ホットライン 2014 round3 バーレーンGP
初めてのナイトレースとして行なわれた2014F1GP第3戦バーレーンGPは、メルセデスの3連勝で幕を閉じた。しかし、2人のメルセデス・ドライバーが最後までバトルを続け、他にも先陣争いがあちこちで展開する面白いレースだった。
レース好きの自動車ジャーナリストの羽端恭一さんと、[STINGER]編集長の山口正己が、バーレーンGPの裏側を語り合う。
◆三連続でポール、そこからの三連勝!
羽端恭一(以下、羽端):今年は要するに「チーム・メルセデス」でないと、ポールも取れないし、優勝もできないってことですかね?(笑)
[STINGER]編集長山口正己(以下、STG):まぁ、そういっちゃうとオシマイですけど(笑)。
羽端:三連勝ってひと言で言うけど、その内容が凄いですよね。
STG:ナイトレースとしての舞台もきれいだったし、10周年のレースにふさわしい内容でしたね。
羽端:そうそう、なえなかいい眺めでした。
STG:バーレーンでは、終盤、2台がすさまじい先陣争いをして、なのに3位と27秒差だったという。
羽端:ははあ、27秒!
STG:ですね。いかにメルセデスが速かったかということです。
羽端:しかも、二台が揃ってということで。
STG:そうなりますね。開幕戦ではハミルトンにトラブルが出て、簡単じゃないと思わせたけれど、第2戦のマレーシアと第3戦のバーレーンでは、”簡単”だった(笑)。
羽端:去年、一昨年のレッドブルも速かったけど、チームの二台ともが……ということじゃなかったから。
STG:確かに。でもそれは、ちょっと比較が違う気がします。今年は、レギュレーションが大きく変化して、メルセデスがそこへの合わせ込みが猛烈に巧くできている。そうそうことかと。
羽端:なるほど。
STG:さらに、バーレーンでの終盤のメルセデス、ハミルトンが固いタイヤで、ロズベルグが柔らかいタイヤだった。
羽端:そうそう! あれはルイスが巧かったのかな?
STG:という見方もできます。いずれにしても、メルセデスが、少なくとも現時点で圧倒的なのは間違いないですね。
羽端:ねえ!
STG:ちょうど、ホンダからメルセデス・エンジンになった2009年が似た状況でした。
羽端:ホンダが降りてしまった次の年ですね。
STG:です。欲張らずに、KERS(運動エネルギー回生装置)も使わずに、まずはシーズン前半にポイントを稼ぎまくった。
羽端:そういえば、マクラーレン・ホンダの全盛時代も、こんな感じでしたっけ?
STG:全盛時代は1988年、例の16戦15勝した1988年が中心になりますけど、その時のアラン・プロストとアイルトン・セナ、前年のウィリアムズ・ホンダのネルソン・ピケとナイジェル・マンセルは、まずはドライバーが別格でしたよね。で、その上にエンジンが圧倒的だった。F1の歴史のなかで、エンジンで勝てた、というのは、ターボ時代最後の数年と、今年だけじゃないかと思います。
羽端:フーム。
STG:今年はまだ始まったばかりだし(笑)。
羽端:そう、まだ”三つ”だけですからね。
STG:しかし、2009年が始まる前に、1988年にホンダのエンジニアだった友人は、”圧倒的に強かった1988年のシーズンオフにそっくりだから、このまま、行っちゃうかも”と予測していて、その通りになった。
羽端:へえー。
STG:でも、2009年のブロウンGP、いまのメルセデスの前身ですけど、シーズン終盤は決して最強ではなかったですから。
羽端:そうですね、シーズン終盤は状況は変わってた。
STG:そうなると思いたいです。フェラーリが力をつけて、アロンソとライコネンがライバルとして確執を起こしてくれるくらいにならないと(笑)。
羽端:ハハハ(笑)。
STG:しかし、レース自体はとても面白かった。表彰台でインタビュアーを務めたロックグループAC/DCのリード・シンガー、ブライアン・ジョンソンが”歴史に残るレース”と言ったけれど、そのとおりだったと思います。あちこちでバトルがあって。たとえば、レッドブルのリカルドが、大立ち回りを演じたり。
羽端:ダニエルは大先輩のセブ(フェッテル)より前でゴールしたからね。もっともセブはトラブルを抱えていたようだけれど。
STG:ですね。ウィリアムズの二人の先陣争いもこれから目を離せない状況で、まさに玉石混淆という表現がピッタリきてますね。是非とも、メルセデスに追いついてもっと混乱してほしい(笑)。
羽端:まさしく(笑)。
◆エンジン戦線もメルセデスの”一強”状態
羽端:今回のニュースは、フォース・イン
ディアの3位では?
ディアの3位では?
STG:ですね。今回の殊勲賞はフォース・インディアだと思います。
羽端:要するに、表彰台は全員がメルセデス・エンジン!
STG:位までのうち、レッドブルを除く6台がメルセデスのパワーユニットですからね。!!
羽端:おおー。でも、それもさすがという感じがしてます。たぶんエンジンでは、ルノーはメルセデスに負けてるはずなので、その中でね。
STG:ですね。それからマクラーレンと、ついでにケータハムにも(笑)。
羽端:レッドブルはルノーに、「エンジンを替えるぞ」と脅かしてるみたいですけど(笑)。
STG:そう言っているかどうか知らないけれど、開発スピードはすさまじいものがあるので、メルセデスもウカウカしていられないかも。
羽端:でも、メルセデス・エンジン搭載でも”速くない”ところもある(笑)。その代表がマクラーレンでは?
STG:いや、速くないわけじゃなくて、トラブルサムなだけと思いたいです。第2戦にノーズを換えたりしてちょっと足並みがそろっていない。ロン・デニスが戻って、体制を整えるのにもう少し時間がかかる、ってことかな、と。
羽端:あと、ウイリアムズもイマイチという感じですね。マッサには期待してたんだけど。
STG:それも見方ですよね。去年のウィリアムズに比べてどれだけよくなっているかを考えると、まだまだ上がってくると思います。
羽端:あ、フェラーリには今回、とくにコメントはありません(笑)。
STG:問題はそこですね。二人の確執を心配、というよりもしかすると期待していたのに(笑)。
羽端:ケーターハムにはひと言あります、完走は立派!
STG:ですね。そこで喜んじゃうのもなんですけど(笑)。でも、まずは足元が固まったので、ここからどこまで上がっていくか。まずはQ2進出の常連になることを期待したいです。
【西湘-西八王子】
Photos by
Sahara Force India / xpbimages.com(ポディウム、)
MERCEDES AMG PETRONAS Formula One Team(ハミルトンVSロズベルグ)
Williams F1 / LAT Photographic(87年のサンマリノGPを制したマンセル)
INFINITI Red Bull RACING / Getty Image(リカルド)
Caterham F1 Team / LAT Photographic(可夢偉)
McLaren/LAT Photographic(ロン・デニス)