イタリアから聞こえてきたモンテゼモロ辞任の真相?!
◆自発的な退任?
フェラーリ会長のルカ・ディ・モンテゼモロが会長職を辞任する。イタリアGPの会場で囁かれていた噂は本当だった。
モンテゼモロといえば、エンツォ・フェラーリ亡き後のフェラーリの顔であり、強いカリスマ性を持った存在だった。バーニー・エクレストンは、「モンテゼモロが去ることは、F1にとって、エンツォが亡くなったのと同じ痛手だ」とコメントした。
ならば、象徴として、例えば、最高顧問などの名前で残ってもよかったのではないか、という疑問も浮かぶが、その答えはいろいろあるようだ。
今回の”人事”は、フェラーリの親会社であるフィアット・クライスラー・オートモーティブ・グループが、『ニューヨークで上場』することがキッカケになった。ウォール街で上場するなら、すべてが”潔白”である必要がある。
モンテゼモロ本人は、リリースで以下のようにコメントしている。
「フェラーリは、フィアット・クライスラー・オートモーティブ・グループの来るウォール街への上場に向け、重要な役割を担います。これは我々にとって新たな、そして今までとは異なるフェーズに入ったことを意味し、グループのCEOがフェラーリの指揮をとることがふさわしいと考えます」。
「これはひとつの時代の終焉であり、私は1970年代に過ごしたエンツォ・フェラーリとの時間に加え、素晴らしく忘れがたい23年の年月を過ごした会長職を退くことに決めました」。
自主的に辞めた、と言っているが、上場するためには、あらぬ噂はじゃまになる、ということから、詰め腹を切らされた、という解釈もある?
◆アリタリアへ?
モンテゼモロは、非常に頭のいいやり手として知られる。だから、イタリア開催ののサッカーワールドカップのディレクター(大会事務局長)も務めた。
しかし、”やり手”とは、ときとして押しの強さとしてマイナス方向に表面化することもある?
モンテゼモロは、フェラーリの他に、例えば高級家具のポルトローナ・フラウやチンザノの代表でもあるのだが、新たに展開を始めた中国や東南アジアのフェラーリ・ディーラーを回って、それらの会社の売り込みを熱心に行なうことでも知られる。熱心を通り越して、”ごり押し”と受け取られることもしばしば、という噂も聞こえる。
イタリアのジャーナリストの間で、こんなジョークもある。モデナの震災に寄付をする話になったとき、モンテゼモロに渡すのがいいか、と尋ねたら、絶対にやめろと止められた。全部彼のところで止まってしまうから、というのがその理由だった。
モンテゼモロは、今後、フェラーリを離れるが、FIATの関連企業であるアリタリアの要職に就くのではないか、という噂がある。もしそうなったら、ほぼ間違いなく、アリタリア機のファーストクラスの座席は、全部ポルトラーヌ・フラウ製になるはず、というのもイタリア人ジャーナリストのジョークだ。ちなみに、フェラーリのスポンサーでもあるETIHAD航空のファーストクラスは、ポルトラーヌ・フラウが使われている。
◆影響はアロンソにも波及?
さて、アロンソは、モンテゼモロにある意味縛られていた。モンテゼモロがやめたら、その呪縛から解き放たれる。このままフェラーリの不調が続けば、マクラーレン辺りに鞍替えしそう?
もうひとり、影響を受けそうなのが、モンテゼモロの腹心として、ドメニカリを追い出してF1チームの新しい代表に納まったマティアッチ。彼のポジションも危ういかもしれない。再びドメニカリが戻るとの予想もある。
いずれにしても、モンテゼモロがいうように、間違いなく時代が変わった。フェラーリがどの方向に変わるのか、ちょっとドキドキしながら眺めておきたい。
[STINGER]山口正己
Photo by Ferrari S.p.A