ハミルトンが王手?! — ホットライン rd.17 アメリカGP
完璧な予選でポール・ポジョンを奪ったニコ・ロズベルグ。しかし、レースではあっけないほどサクッとルイス・ハミルトンが勝った。これで、ハミルトンは、チャンピオンに王手? しかし、二人の差24点。優勝すれば25点が加算されるから、まだまだ余談は許されない?! いよいよ佳境を迎えた2014F1GP。レース好きのエディター羽端さんと、STINGER編集長が語る、アメリカGPの見所。
◆ハミルトン強し! ウィリアムズ惜しくも表彰台ならず
羽端恭一(以下、羽端):予選はニコ(ロズベルグ)がポールでしたけど。
[STINGER]編集長山口正己(以下、STG):ニコとしては完璧な予選でした。あのアタックラップは、ハミルトンも脱帽してました。
羽端:おお、そうなんだ!
STG:ハミルトンは、ブレーキバランスがうまく調整できていなくて、多分これは温度管理の問題らしいですが、それでブレーキがロックしてタイムロスしていた。けれど予選後の会見で、”それがなくても、今日のニコには適わなかった”というようなことを言っていましたから。
羽端:ははあ。でも、今週はフリー走行でもずっとルイス(・ハミルトン)が速かったので。
STG:ですね。だからてっきり予選も、と思っていたので正直驚きました。
羽端:……なので、決勝では、ルイスが勝つんだろうなとは思ってましたけどね。
STG:ロズベルグは、F1に来る前から、一発は速かった。けれどレースが若干、弱い、というか、ハミルトンが強すぎる、とも言えますけど。
羽端:ハミルトンのレースの巧さですね。それで、ピレリによればですけど、ルイスとニコのタイヤ戦略は同じだった、と。ソフト→ミディアム→ミディアムかな、ツーストップで。でも、どっちかが勝負かけるというか、違うタイヤ戦略にはしなかったんですね?
STG:今回はソフトの寿命が短かったので、それしかメルセデスとしては作戦がなかった、とトップ3インタビューで、ハミルトンが語ってますね。
羽端:あ、そうでした! そこでは、二位のドライバーは”別のこと”をするのが当然だとも、ルイスは言ってましたね。
STG:あのコメントも、いわば自信のあらわれかな(笑)。
羽端:ははあ。ほら同じ戦略で走って、終わってみれば「4秒差」でしょ、と(笑)。これが現状での二人の差だと言いたくなりますが?
STG:と思います。
◆残り二戦、まだ誰がチャンプかは見えていない!
羽端:ウイリアムズが惜しかったですね。レッドブルのタイヤ戦略の巧さもあったかもしれないけど。
STG:ですね。特に、今回はフェリペ・マッサだったので、表彰台に乗ってほしかったなぁ、と。
羽端:そうですね。そしてセブ(セバスチャン・フェッテル)も、後方スタートでけっこう見せ場を作りました。
STG:序盤のペースが上らなかったので、本人としては不満だったみたいですけど、シーズン5基のパワーユニット制限を護れずに6基目に積み替えたペナルティでピットスタートだった今回のレースは、フェッテルは久々にチャンピオンらしいレースを見せてくれたと思います。
羽端:残り二戦となったシーズンですが、やっぱり今年はルイスでしょう!
STG:確率的にはほぼそうだと思うけれど、まだ、わからない。なにせ、モーター・レーシングは、本当に最後までわからないですから。最終戦は ポイント二倍だし。
羽端:ウーム、その最終戦”二倍返し”というの、ほんとにやるんですね。シーズン前にいろいろ言われるジョークのひとつかと思ってましたが(笑)。
STG:まぁ、結果として面白くなっている、と言えなくもない(笑)。
羽端:……なんかそれ、安っぽいカジノの閉店間際みたいで、好きじゃないな。いや、カジノを知ってるわけじゃないけど(笑)。
STG:決まっちゃったことなので、まずは受け入れて見物させていただく、と(笑)。
羽端:まあ、たしかに、タイトル争いはおもしろくなってるか。
STG:アメリカGPを終わったところで24点差、というのが、じつに微妙。
羽端:最終戦は「倍」だし(笑)。
STG:ですね。
羽端:いま24点差ということは、優勝すると25点ですよね。次のブラジルで、ハミルトンがリタイア、ロズベルグ勝利だと、逆転てことですか!
STG:ですね。なんか、仕組まれたような点差(笑)。
羽端:ハハハ(笑)。
STG:ただし、二人は、たいてい1位と2位のどっちかなので、通常なら優勝の25-2位の18で7点の差しか付かない。
羽端:ウン、それはありますよね。そういう意味では、簡単に差は縮まらない。
STG:最終戦なら1位50点、2位36点ですから、その差は14点差しかないわけです。なので、最終戦のアブダビを前に、二人の差が15点以上ないと安心できない、ということになります。
羽端:なるほど。でもリタイアしたら、もちろんゼロだから?
STG:それが当事者にとっては一番怖くて、だから1997年の最終戦で、すでに2度チャンピオンになっていたミハエル・シューマッハが、ジャック・ヴィルヌーブがリタイアすれば自分がチャンピオン、ということで、ぶつけちゃって失格になり、年間ポイントを剥奪されるような事態になったりするわけですよね。
羽端:あ、シュー先生はそんなことしてたんですね。”らしい”といえば”らしい”話ですが。
STG:シューミーは、それがなければ、8回ワールドチャンピオンになったかもってことで。
羽端:おお〜!
STG:そういう機微という、当事者の心境も、これから残り2戦で気になって、レースは間違いなく面白くなると思います。
羽端:ただ、もしその”二倍返し”ルールが絶妙に働いて、今年のチャンピオンがルイスじゃないってことになったら、F1っていうスポーツに、私はちょっとガッカリするかも。
STG:それも含めてF1、ということで(笑)。
羽端:深〜いご意見、ありがとうございます(笑)。
STG:どういたしまして(笑)。
【西湘-西八王子】
Photos by
Pirelli & C. S.p.A. – Pirelli Tyre S.p.A (ポディウムのハミルトン)
INFINITI Red Bull RACING / Getty Images (フェッテル)
Ferrari S.p.A (シューマッハ)