[STINGER]新春特別企画 浜島裕英エンジニアに訊く、”フェラーリの3年間とこれから” 2/4 ゲーム感覚の2014マシン
◆エンジンパワーの大きな差
・・・・まずはエンジンパワーの差があった、と。その状況で、復帰したキミ・ライコネンが、特に序盤、不調でした。
浜島:ひとつは、まずブレーキbyワイア(※3)が難しい技術で、素直なブレーキじゃないんですね。ブレーキングしてコーナーに入って行っても、突然、バッテリーのチャージがうまく行っちゃうと、リヤのブレーキが急に弱くなっちゃったりとか、ソフトウェアの問題もあって、自然派のキミは、そういうところが素直じゃないと、なかなかうまく運転できない。一時、テストの頃は、フェルナンドより速い時もありましたが、そこが大きかったですね。
※3:物理的にワイアを使わず、電気信号で操作を行なう。物理的なシステムに比べて、リニアな感覚が生み出しにくいとされる。
・・・・ゲーム感覚の若手が速い。
浜島:だからリチャルド(レッドブルのダニエル・リカルド)は速かったし。セバスチャン(来年フェラーリに移籍するセバスチャン・フェッテル)も、ボクが昔知っている頃のことや、シーズン中に話をしたところでは、ブレーキのフィーリングに非常にこだわっていましたね。
・・・・ライコネンのスピンを見ていると、テストの時も、バーレーンGPも、それからカナダGPも、低速からの勝ち上がり区間で巻き込んでスピンしている場面が何度もありました。立ち上がりでスピンする、というのは、素人的で、とうてい名手のライコネンとは思えない状況で、へたになっちったのか、と(笑)。
浜島:下手になるわけがないですよね(笑)。あれも、進入のときのヨー(前後の荷重移動→左右方向の動き)の関係があって、ヨーが納まるはずと思ってアクセルオンしているのに、ヨーが残っていて、というようなことで、想定通りに減速しきれなかった、というのが原因だと思います。その辺りは、プラクティスの後のミーティングで、かなり、キミは文句を言ってましたね。だから、かわいそうでしたよ。
・・・・シーズン後半は、それが追いついてきた。
浜島:やっと、ソフトウェアがよくなって、チャージしたエネルギーを使うハードウェアもよくなって、なんとかなってきた、ということはあると思います。
・・・・若いゲーム世代のドライバーがいいというのはわかりますが、なぜ、アロンソはそれなりに走れたのでしょう。
浜島:フェルナンドはそれなりの才能を持っているんでしょうね。そういう状態でもなんとかしちゃうドライバーですね。
・・・・天然自然の感覚だけではない何かを持っている?
浜島:新たなものを経験すると、自分の感覚に頼るだけではなくて、対応できる能力を持っている、ゲーム感覚的にもいけちゃう人ですね。みんなが言っている天才なんですよ。
・・・・なるほど。
浜島:でも、天才がいたからこそ、開発が遅れちゃう、というような。
・・・・う〜ん、なるほどぉ!! 深いですね。
浜島:フェルナンドは乗りこなしちゃうから、キミ、なんとかしなさい、ということになってしまう。決してキミがフェルナンドと比べて劣っているんじゃないんですね。でも、フェルナンドはそういう才覚を持っている。だからある切り口ではキミの方が上だと思うんですけど、今年(2014年)の状況からいくと、フェルナンドはその才能をいかすことができた、ということだと思います。