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マクラーレン・ホンダの行く先・その2:テストに必要な時間

ホンダV6TC.jpg
バトンが完走してデータが蓄積できた。次の段階は? 写真は最強伝説を築いたホンダV6ターボ。最強伝説にたどり着くまでには、それなり以上の時間がかかった。


その1からつづく

一昔前までは、F1エンジンの開発は、”壊すこと”でその結果から進化した。特に、1500ccから1000馬力以上を叩き出していた1980年代中盤のホンダ第二期のV6ターボ時代は、ホンダF1チームの総監督であった桜井淑敏さんの、”ボコボコ壊れてましたね”、という言葉の通り、壊すことが進化のベースにあったようだ。


しかし、当時はシミュレーション技術が現在のように十分でなく、経験値と実際の耐久性がほとんど見えていなかったため、確認のために耐久テストを行ない、その結果エンジンが壊れることが多かったようだ。つまり、想定外のことが起こって壊れる事象が頻発したのだ。


20150316-マクラーレン・ホンダ (11).jpg

現在でも想定外のことが起きる可能性を確認するためにテストが行われるが、その前段階で行なうシミュレーション技術が格段に進化しているので、以前ほど壊れることはなくなっていることは想像に難くない。


だが、壊れることが少なくなっても、問題に対応したかどうかの確認するためのテストは、安全のためにも行なわなればならない。『走る実験室』という言葉が便利に使われるけれど、第一期ホンダF1監督の中村良夫さんは、この表現を嫌っていた。セナ時代にもホンダは、テストで安全が保証されないエンジンを現場に届けることをしなかった。つまり、実験は、実戦の前に充分行なう、という考え方が徹底していたからだ。これは、自動車を売って生計を立てている日本の会社なら、当然の思考回路である。


さて、テストが必須であることは理解したとして、テストのためには、当然ながらある時間がかかる。テストしたから明日新たなパーツが出来上がるほど簡単な話でも当然、ない。


1回のテストとその結果が反映されたブツができるまでの大方の時間は以下のようなイメージである。


まず、テストに必要な部品の設計に最低1週間、モノによって4週間、その製作に4週間から10週間が必要になる。


さらにパーツが完成してからエンジンの組立に約1週間、テストの準備に2日か3日、テストじたいに5日から長ければ10日、そこで得られた膨大なデータ解析に3日から5日が必要で、最低でも2週間、通常は3〜4週間ほど時間が必要といわれる。


それを加味して、今回のメルボルンで走行データを反映された対策パーツが完成するのが4月中旬以降になり、そこからテストを始めると、実車に搭載されるのは、早くて5月末、通常なら6月に入ると考えるのが普通の感覚になるという。


ただし、超近代的なシミュレーター解析装置やスーパーコンピュータをそろえた通称”サクラ”では、もっと時間を短縮できるのかもしれないが、いずれにしても想像以上の時間がかかるということだ。

その3につづく

photo by HONDA
[STINGER]山口正己
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