停まったマシンを押したアロンソ
ハンガリーGP予選Q2、ゼッケン14のマクラーレン・ホンダでアタックに出たフェルナンド・アロンソが、アタックラップに入る最終コーナーで突然スローダウンしてそのままコースサイドにマシンを停めた。電源が落ちて停まったような、突然の停止だった。
コクピットを降りたアロンソは、一瞬、呆然と立ち尽くしたように見えたが、一計を案じて、左手で左フロントタイヤを押し回し、右手でステアリングホイールをつかんで、マシンを押し始めた。
一人でクルマを押す事態になったとき、タイヤを回すのが最も力が入りやすいのだが、アロンソの行動に思わず声援を送りたくなった。
マクラーレン・ホンダが停まった場所が、マシンが通過するレコードライン上だったことで、安全な場所に移動させようとしているかに見えたが、その後アロンソが、ピットに戻ろうとしていることが分かった。アロンソは、走りたかったのだ。
アロンソ+マクラーレン・ホンダはこの週末、悪くない滑り出しを見せていた。金曜日から土曜日にかけて行なわれた3回のフリー走行で、11番手、8番手、8番手とマクラーレン・ホンダとしては悪くないポジションに着けていた。
まだまだ満足できるペースとはいえないまでも、トップとのタイム差は2秒を切り、今シーズン最小だった。マクラーレン・ホンダが進化したこともあるが、会場のオンガロリンクが、ドライバーの腕前がものを言うレイアウトであり、アロンソの力量が証明されつつあった。
だからアロンソは、予選に期待をかけ、Q3進出を目指してアタックに入りたかったのだ。
アロンソは、レース後、「調子がよく、安定してトップ10入りできていただけに、本当に残念」と、ガッカリした胸の内を正直に告白した。
クルマを押すアロンソをみて、改めてマクラーレン・ホンダを応援したくなった。こんなに一生懸命なアロンソを見たマクラーレンのチームメンバーもホンダのスタッフたちも同じ気持ちだったに違いない。
「予選でトラブルが出たのはいいタイミングではなかった」とアロンソは言ったが、逆に言えば、決勝で出たよりまだよかった。燃料搭載量の多い状況では、悪くない感触であることも確認できている。
追い越しの難しいオンガロリンクだが、決勝レースでアロンソが、この鬱憤晴らせるか。70周のレースに注目したい。