トンネルの出口が見えた?!–ホンダF1中間展望インタビューより
◆問題のほとんどは解決済み
ホンダF1レーシングの新井康久代表は、ホンダのホームページで、ここまでのシーズンを振り返るインタビュー形式のコメントを披露した。
新井代表は、シーズンを振り返って、「本当に厳しいスタートになっている」とコメントしているが、その後に「ありがたいことに、問題のほとんどが解決済み」と続けている。
しかし、”ほとんど”ということは未完成な部分が存在するわけで、ここは本来「まだまだやりのこしていることがある」と言うべきではないかと思う。ケチをつけているようで申し訳ないが、完成するまでは未完成だ。特にF1は、『整理整頓世界選手権』であり、やり残しがあっては勝負にならない。
コメントの中で新井代表ご自身が、パワーユニットを、空力重視のボディ形状を優先させ、パワーユニットを小さいスペースに押し込んだために熱の問題に悩まされていることに触れ、”完成すれば圧倒的に有利になるはずだが、熱の問題に苦労している”と述べている。
ホンダがマクラーレンと協議の上で決めた空力的に優位な小さいリヤエンドは、去年フェラーリが失敗している。成功させればホンダの技術を世に問うことができるテーマだ。だから、このチャレンジには惜しみないエールを送りたい。
そして、狭いスペースで高負荷の熱の問題を解決しようとしている、その過程にこそ、チャレンジの意義があると思う。目標に到達する前に、期待を煽るコメントを聞きたくないのはそのためだ。
◆ダブル入賞
ハンガリーGPで2台そろって完走し、5位と9位に”ダブル入賞”した。結果じたいは喜ばしいことだが、20台参加して、そのうち2台のマルーシアは、数に入らないほど遅いことから、18台の勝負である。そこを考えると、10位以内を入賞と言うことじたい、おこがましいとも言える。
F1GPが、ポイントを安売りしていなかった以前のように、上位6位までが入賞、という形が潔くてＦ１GPらしいと思うが、それはそれとして、『入賞』の価値を見定めておきたい。
もちろん、アロンソの5位は、上がつぶれたとはいえ、これまでのトラブル続きの状況では、他がつぶれる前にマクラーレン･ホンダはつぶれていたわけで、ゴールまで走り続けたことは、間違いなく大きな進歩だったのだが、ダブル入賞は、間違いなくマクラーレン･ホンダの進化ではあったが、実はそういうレベルでしかないことも頭に入れておきたい。
しかし、新井代表は、”オンガロリンクは、技術的な観点から小さなターニングポイントだった”とコメントしている。F1GPの舞台となるサーキットは、1戦毎に性格が異なり、アロンソが、モナコとオンガロリンクとシンガポールのマリナ･ベイの3つを”我々にとってチャンスあるコース”と正直に表現したことを引き合いに出すまでもなく、他のコースが同じようにうまく行くとは限らない。
むしろ、この後に続くベルギーGPのスパ-フランコルシャンとイタリアのモンツァは、パワーサーキットであり、オンガロリンクとは比肩できない厳しいレベルでパワーユニットに熱の負荷を強いるコースだ。
したがって、”これから段階的によくなっていく”というのはまさに机上の空論であり、厳しいことに、実は鈴鹿も、モナコやオンガロリンク並に高いダウンフォースレベルのコースだが、パワーがモノを言うコースであることを忘れてはならない。
ホンダが届けた記事の導入部分に、”トンネル出口の光が見えた”とある。F1に対して愛を持って、”まだまだ、トンネルの出口の光がやっと見えた段階だが、ホンダは目標に向かってチャレンジを続ける”としてほしかった。
ぬか喜びはあとで哀しい。ホンダの“Mid-Season Review”は、そうした構えで眺めることをお勧めしたい。
photo by STINGER/HONDA
［STINGER］山口正己
