「うちは7回、メルセデスは1回だけ」–ホンダの後半戦への期待–その4
サクラでは、今日も粛々と開発作業が進んでいるはずだ。
「元々レースエンジンの開発はほとんど出力の開発ですから」という長谷川祐介F1プロジェクト総責任の言葉には、単純明快なパワーユニット開発の姿があった。言われてみれば当然のことだ。
メルセデスがパワフルであることは今や常識になっているが、それを倒すことがホンダに限らず、フェラーリもルノーも目標になっている。そして、パワーが上がれば、燃費がよくなる、というこれまた当然のこともついてくる。
一方で、ホンダの課題は、耐久性にもあった。すべてがエンジンの責任ではなく、たとえば開幕戦のフェルナンド・アロンソのアクシデントのような状況もあった。さらに車体側に責任があるケースも起きていたが、マクラーレン・ホンダは12戦までで、7回のリタイアを喫している。
「チームとしての信頼性はまだまだ。メルセデスはスペインの同士討ちの1回だけ。そういう意味でもまだまだです」というのが長谷川F1プロジェクト総責任の認識だ。「チーム全体での信頼性はまだまだ」と、総責任はキッパリと言った。
もちろん、だからといって手をこまねいているわけではない。トップ3に続くポジションの中で、ハンガリーではその先頭を走ることができた。けれど、コースによっては、Q3進出ができないこともある。ライバルとして、ウィリアムズ、フォースインディア、トロロッソが並んでいる。長谷川F1プロジェクト総責任は、「ウィリアムズくらいくらい食ってやりたいと思っていますが」といたずらっぽくコメントした。
「コストラクターとして4番目になりたいですね」というのが、シーズン後半に向けての目標と言っていいだろう。本人はそうはいっていないが、”Q3進出”というところから目標は大きく進化したのだ。
しかし、表彰台は?という質問に、長谷川F1プロジェクト総責任は、即座に、「無理ですね」と返した。自暴自棄になっているのではなちろんなく、その言葉の裏に、F1という高い山を意識しながら、慌てずに確実に前進しているエンジニアの姿が見えた。
[STINGER]山口正己