ホンダF1長谷川総責任者一問一答–その7
2017バージョンは、大きな変更を受けて登場する。
F1復帰2年目を終えたホンダ。シーズンオフを休むことなく次への開発作業に明け暮れるホンダF1レーシングの長谷川祐介F1プロジェクト総責任者の胸の内。
(その6からつづく)
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その7 ◆ 不具合はそのままにしない
—-これまでホンダはF1で多くの経験を積んできているわけですが、まだ完全にはわかっていないところがある。
長谷川:分かってないんです。なので、限界を突き詰めて、ピンピンよりさらに薄くして作ったりしていますから。で、試験してみて、実際に持っちゃったらさらに薄くする、ダメだったら厚くする、というような試行錯誤の繰り返しです。
—-最近の例で具体的になにかありますか。
長谷川:去年の最終戦のちょっと前に使いだした軽量のエキパイは、1kg軽くなりましたが、それまでがドンだけ重かったんだ、と冗談を言われました(笑)。でも、計算上では持つはずが、ブラジルで割れたので、最終戦のアブダビでは戻しています。
—-設計上は問題なかった。
長谷川:作ってみたら、無理があった。ブラジルのレースでは問題なくゴールできたし、計算上では大丈夫なんだけれど、プラクティスで割れたことを反映して、アブダビでは元に戻したんです。
—-もしかすると戻さなくなよかった。コースの違いでのストレスのかかり方とか?
長谷川:そういうのもありますし、モノのばらつきも当然ありますから、たまたま割れたエキパイが、作りに不具合があったかもしれないし。そういうことを全部含めて、工業製品はそういうものですから。
—-それを確認する時間がないなら次は使えない、ということですね。
長谷川:不具合があったら、そのままにはしないで、必ずなにか手を打ちます。それが基本ですから。
—-進化する、というのはそういうことなのですね。
長谷川:たまたまとか、偶然だから放っておこう、ということは絶対にあり得ないですね。起きたことには必ず対処する。なので、参戦がハイブリッドになってから1年遅れたのはめちゃくちゃ大きかったですね。
◆STINGERの観方
突き詰めたはずのテクノロジーを、さらに高みに押し上げる。時には想像を超えた結末が出るけれど、想定できなかったことは、徹底的に検証して次に進む。3年目に向けて、ホンダF1レーシングのチャレンジは余談なく続けられていく。
[STINGER]山口正己
photo by HONDA
(その8につづく)