スタート前進行の重要性–歴史に名を残した2017F1GP第17戦アメリカGP
10月22日にテキサス州オースチンのサーキット of the アメリカズで行なわれた2017F1GP第17戦アメリカGPは、歴史に名を刻むレースになった。
バーニー・エクレストンから主導権を引き継いだリバティ・メディアが、次々と“新ネタ”を繰り出し、時代の変革を強く感じさせたからだ。
まず、予選時間。通常、フリー走行3終了2時間後に予選は始まるが、この“伝統”が崩された。人気アーティストのジャスティン・ティンバーレイクのコンサートが始まるまで、観客をつなぎ止めておくために、フリー走行終了から4時間後に予選が行なわれた。
“他のもの”のために、F1GPがポジションを譲ったことが不自然さも感じさせたが、実はそれは、歴史を変えるために用意された週末の数々の企みの序章にすぎなかった。決勝レースではさらに多くの現象が現れた。中でも、スタート前進行が、これまでにない形で始まった。
通常の日本でのF1GPのテレビ放映は、スタート30分前に始まる。しかし、今回のフジテレビNEXTのCS放送が始まったのは45分前。それは、アメリカのプロレス団体であるWWEのような選手紹介に時間をかけたからだった。
20人のドライバーが、エントリーナンバー順に後ろのチームから紹介されていく。マスターオブセレモニー(司会)を務めたのは、プロレスのWWEやボクシングの名調子で名高いイベント司会者マイケル・バッファー。
WWEのレスラー紹介よろしく、チームの二人を呼び上げ、ヘルメットを持ったドライバーが、スモークの中からコース上のレッドカーペットに飛び出していく。
レッドブルから残り3チームは、ドライバー一人一人の名が別々に読み上げられ、最後は、ポイントを争うセバスチャン・フェッテルとルイス・ハミルトンが、ワールドチャンピオン・トロフィーの前に呼ばれた。観客もドライバーも、そこにいた全員のテンションが最高潮に高まり、アメリカ国歌が独唱され、名調子がエンジンスタート・コールでエンジンがかかった。
スタート前進行は、観客を盛り上げて場内のテンションを上げ、ドライバーにそのテンションが波及してレース展開を白熱化させる。まさにその通りの楽しめるレースになった。
そして、ハミルトン+メルセデスが真っ先にチェッカードフラッグを受けると、表彰台のプレゼンターは、クリントン元米大統領。そして表彰台のインタビュアーは、人類史上最速のスプリンターのウサイン・ボルトが務めた。役者をそろえて万全な演出。
2017アメリカGPは、スタート前進行と締めの重要性を証明する素晴しいレースになった。
[STINGER]山口正己
Photo by Ferrari S.p.A / FERRARI MEDIA