続・最後のトヨタF1–カウントダウン企画 2018F1GP開幕まであと87日
(87からつづく)
F1が楽しみになる、あんな話、こんな話。
トヨタTF010と呼ばれて2010年を走るために、撤退発表後も開発が進められていたマシンは、紆余曲折の末、残念ながらお蔵入りとなったが、撤退から完全終了が公になるまで、実はTMG周辺には、不安の中にも新たな夢向けて張りつめたムードがあった。
トヨタの撤退は、当然、すんなり決まったわけではない。日本の本社でもさまざまな要件が検討されたはずだ。結果として“F1村”に挨拶なしで撤退するというやや残念な形で撤退が発表されたが、そこで終わったわけではなかった。
マネージングbyアウトという捨て身の方法で、どこかに引き渡してTF110に活躍の場が与えられる可能性があった。しか、その淡い夢は、「資産をただで譲渡するのは問題だ」との本社の意見で実現しなかった。
しかし、それでもあきらめなかったTMG関係者は、可能性を追い求め、そのまま継続していれば中嶋一貴と小林可夢偉のコンビが誕生するかもしれなかった。しかし、トヨタTF110改め、ステファンGP-S01と呼ばれ、中嶋一貴の手でテスト目前までこぎ着けたその夢も、残念ながら実現することはなかった。
(85につづく)
[STINGER]山口正己
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