F1に4WDがないのはなぜ?–カウントダウン企画 2018F1GP開幕まであと80日
(81からつづく)
知れば知るほどF1開幕が楽しみになる。
F1が後輪駆動なのはご存じの通り。車体中央(ミッドシップ)に動力を搭載するMR(ミッドシッップ/リヤ駆動)だ。しかし、WRCのトップランナーは例外なく4WD。なぜF1は4WDにならないのか。
今は4WDはF1では禁止されているが、禁止される以前から、4WDはF1には必要なくなった。それは、タイヤが発達しグリップが上がったからと考えられる。
1960年代から1970年にかかる辺りまで、スピードアップを目指すF1にも4WDが存在した。ロータス、マクラーレン、マートラなどの優勝経験コンストラクターや、エンジンビルダーのコスワースが4DWマシンを走らせたことがあるが、1971年イタリアGPで、翌年ワールドチャンピオンになるエマーソン・フィティパルディが、周回遅れながら8位に食い込んだ[ロータス56B]を最後に、F1の舞台から姿を消した。
発展途上で4WDが姿を消した時期が、スリックタイヤの登場とピッタリ合致する。もし、タイヤの放熱の問題が解決せずにスリックタイヤが登場しなければ、4WDが威力を発揮したかもしれない。しかしそうはならなかった。
また、4WDが禁止されなくても、ドライブシャフトで4輪を駆動する様式での4WDは不可能。空力が優先される思考回路から、F1マシンに前輪を回転させるためのシャフトを存在させるスペースを取るのは簡単ではないだろう。
WRCの場合は、路面コンディションからスリックタイヤを使うことが限られ、駆動力として4WDが最適にして最速。車体がF1に比較して大柄な市販車ベースのため、システム搭載が比較的やり易いことも、4WDが必須となっている理由だ。
ただし、ルマン24時間などに参戦するWEC(世界耐久選手権)マシンのトヨタTS050 HYBRIDのように、ドライブシャフトを使わず、ブレーキ回生のエネルギーを何らかの方法で取り込むやり方で前輪を回し、結果として4WD化するやり方は、メルセデスF1がやっているのではないかとの見方もあり、別の道が拓かれることになるかもしれない。
[STINGER]山口正己
写真素材:TOYOTA