「ポテンシャルをまだまだ出し切れていない」–ハースF1チームの小松礼雄レース・エンジニア
ハースF1チームは今年で誕生3年目を迎えた。デビュー戦となった2年前のメルボルンでいきなり6位に食い込んだことは記憶に新しい。
今回も、予選前から「ポテンシャルがあることはわかっている」と自信をみせていた小松エンジニアだったが、予選後に「もうちょっと行けたはず」というコメントに少々面食らった。しかし、でまかせではなくそういわせた説得力ある理由があった。
ハースは全体で200人以下の”小さいチーム”(小松エンジニア)だ。フェラーリやメルセデス、古巣のルノーとは比べ物にならない。その中で、マシンはもちろん、チーム全体の”エンジニアリング”を構築し、昨年型の開発をシーズン終盤にきっぱり止めて、今年型の開発にリソースを回した。それを推進したのが、小松エンジニアだった。
「だからこの予選結果は、嬉しいというより、ホッとしています」
開発をストップしたマシンでシーズン終盤を戦ったチームメンバーは辛かった。でも、その我慢があったからこそ今日の結果が実現した。マシン自体はもちろん、トータルパッケージングが重要だが、チームそのものも、全体の見極めが重要なことが立証された。
“もうちょっと、というと、0.5秒くらい速くなったということでしょうか”と水を向けると、「0.5秒は”ちょっと”じゃないですよ、0.1秒とかそれくらい」と間髪入れずにコメントが返ってきた。
「レースを完走できるかどうか」が肝心とも言った。「大きなチームなら、次のレースに投入できる改善も、5レースかかるんです。今改善すべきことはわかっていますが、なかなか手が回らない」。
そんなハースF1チームを、改めて応援したくなった。「怖い」”AYAO”の前では直立不動の二人のドライバーのことも含めて。
STINGER 山口正己
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