F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

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シリーズ・バーチャルセーフティ・カー :その6・自動車メーカーの思考とF1

1968年に登場し、インパクトを与えたゴールドリーフ・カラーのロータス49B。2002年のオールドモナコで佐藤琢磨がドライブしました。

記録だけでなく、記憶に残すために

F1のスポンサーは、1968年に名門チームとして名高かったロータスのコリン・チャップマンが、それまで国別に決まっていたナショナルカラーを脱ぎ捨てて、赤/金/白のゴールドリーフというたばこのパッケージ・カラーで登場したのをきっかけに、F1の歴史も塗り替えて今にいたっています。

たばことF1は、その後も、マールボロやロスマンズなど、深く長い関係を築きましたが、やがてたばこ広告が禁止され、IT関連メーカーに移行した時期も経由して、現在は自動車メーカーが最大のスポンサーの多くを委ねる状況になっています。

たばこメーカーと自動車は、F1に対するスタンスが大きく違います。最大の違いは、レギュレーションに口出しするようになったことといえます。

たばこメーカーは、F1のレギュレーションがどうあれ、自分たちの商品には無関係ですが、自動車メーカーはそういはかない。本来、スポンサーは、『金は出しても口は出さない』というのが暗黙の了解として紳士のやり方でしたが、なかなか紳士ばかりではないのが辛いところです。

自動車メーカーがF1に参加する理由が、「安全と省エネの開発に役立てるため」というもっともらしいテーマだったりしますが、ここが勘違い。それが拡大して車両規則にも口出ししたくなります。たばこメーカーと自動車メーカーの違いがそこにあります。

で、「我々にとって有意義な開発の方向性を感じられる規則になったらF1に参戦する」というようなことを平気で言ってしまうメーカーが出現するわけですが、そもそもF1は、決められた規則の中で、いかに速く走るか、というテーマの闘いです。速く走ることと、安全と省エネ、真逆に見えて、実はまったく一緒ということに気付いていない。

そもそも、与えられた燃料をいかに効率よく燃やすか、という目標に向って開発されるF1のエンジンは究極のエコエンジンです。フルパワーで速く走ることに特化した使い方になっているからエコに見えないだけで、高効率のレベルは凄まじいハイレベル。

パワーユニットの燃焼効率は徹底的に突き詰められ、メルセデスが発表した燃料のエネルギー変換効率、つまり、投入した燃料エネルギーの何%が動力にいかされるか、という数字が凄い。通常のクルマはせいぜい30%ほどですが、メルセデスのM09 EQ Power+は、なんと約50%を達成していると言われる究極のエコエンジンなのです。

つまり、スピードを争う限り、高効率のエンジンは必須。もっと基本的なところでは、軽量化はエコに大きく影響しますが、レーシングカーは徹底した軽量化が図られます。軽くなれば運動性が向上するだけでなく、燃費もよくなる。要するにF1は、スタートしたときから常にエコ方向の開発を徹底して行なえる舞台なのです。

これはタイヤも同じ。グリップがよくて転がり抵抗が少なく、長持ちするタイヤ。F1タイヤはまさにこの方向で開発されているからです。

自動車メーカーには、是非ここをご理解いただいて、F1活動を継続していただきたいと思う今日この頃です。

[STINGER]山口正己
Photo by [STINGER]、MERCEDES AMG PETRONAS Formula One Team

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