シリーズ・バーチャルセーフティカー :その10・ベントレーの作戦
記録だけでなく、記憶に残すために
ある意味で、“いかにお金があるか”を競うのがF1GPやトップカテゴリーのレースと言えるのかもね、と言う視点があります。例えば、2003年のル・マン24時間レースでベントレーが圧倒的な力を見せて優勝しました。ベントレーといえば名門中の名門。復活を期して送り込んだマシンは、磐石でした。
潤沢な開発費があるから、一流の設計者にデザインを依頼でき、信頼できるチームに運営を託して高度なマシンを走らせられる。高度になればなるほど些細なトラブルが頻発する可能性が高くなるけれど、豊富な資金で充分な開発テストができるから万全の体勢でレースに臨めます。
いざレースになると、訪れる関係者やお世話になっているVIPたちに充分なおもてなしをするために、莫大なホスピタリティ予算が必要です。さらに、彼らを招く仮設テントの中は、邸宅と見紛うデザインで設えられ、振る舞われる料理は一流レストラン仕込み。そこで配られるパンフレットまで、予算レベルを知らしめる見事なクォリティに仕上がっていました。
そして、ベントレーはル・マンを圧倒的な強さで制覇しました。“さすがベントレー”。人々は口々に栄誉を称えました。それはある意味、ベントレーが一番お金を持っていたことが証明された、ということにもなるのです。
そして、ル・マンは年に一回なので、名前は世界中で有名ですが、全体のクォリティで言えば、F1GPのレベルは、それをはるかに越え、さらに、資金だけでは勝てないこともご存じの通りです。
[STINGER]山口正己
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