シリーズ・バーチャルセーフティカー :その24・モナコは壮大な音響装置
モナコGPで案外大切なのは音だったりします。本当は、自然吸気エンジンのV12かV10の音を聞いてほしかったけれど、今でもモナコを特別にしているのは、モナコ湾を囲むコース全体が、巨大な音響装置になっているところです。
モナコ湾を囲むようにビルが立ち並び、木曜日にマシンが走り出すと、ビルにこだまするエンジン音が鳴り響きます。今は随分おとなしい音になったけれど、それでも、えも言われぬ響きが会場を包みます。それは、モナコGPの会場が独特のシチュエーションだから。
ビルに囲まれているだけだと、うるさいかも、ですがモナコを独特にしているのは、モナコ湾が地中海に開けているために、音がこもらない、という音響効果のためなのです。ビルにこだました音が跳ね返って地中海に吸い込まれる。だから美しく響くのです。
オススメは、最初の走行が始まる木曜日の11時の30分ほど前に、カジノ周辺かオテルドパリのバルコニーでお茶(ビールでも結構)を飲みつつセッション開始の11時を待つことです。この辺りです。
11時少し前、ピット出口に移動するエンジン音がかすかに聞こえます。11時きっかりに、その音が甲高くなり、1コーナーを駆け上がって目の前に現れる。この瞬間を味わってしまうと、もう後戻りはできません。
[STINGER]山口正己
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