賛否両論、スーパーフォーミュラのHALO
◆7月31と8月1日に、富士スピードウェイで、スーパーフォーミュラの次期型マシンであるSF19のテストが行なわれ、HALOがトライされた。当然、賛否両論が渦巻いた。かっこわるいから要らない? それとも、安全のためには仕方ない? なんとも悩ましい選択だ。
◆“格好”については賛否両論。筆者自身、最初はかっこわるいと思ったけれど、最近では、ないとなんだか拍子抜けに感じたりしている。もちろん、装着されたマシンが外見的にかっこいいか悪いでいえば、かっこいいとは言いにくいけれど。
◆さて、F1とF2では、今年からHALOが採用されている。これは、“万が一”の捉え方があるからに違いない。過去に、飛んできたタイヤがドライバーに当たって死亡事故が起きている。まさに万が一のケースで、ヘンリー・サーティースが、他車のクラッシュで外れたタイヤの直撃を受けて、2輪と4輪のワールドチャンピオンの父を悲劇のどん底に突き落とした。HALOが装着されれていれば、サーティース家の悲劇は起きなかった可能性が高い。
◆ただし、装着は、その悲しさの可能性を下げるためだけでなく、もう一つの役目がある。HALOに限らず、安全のための様々な装置は、モータースポーツの危険性を低くくするだけでなく、FIAを中心とする統括サイドが、安全面に徹底的に留意していることを示すためだ。責任ある対応でモーターレーシングが推進されていることを証明するため、という言い方でもいいかもしれない。
◆セナが亡くなった次のモナコGPのトンネル出口のシケインで、カール・ベンドリンガーが、引退を余儀なくされるアクシデントに遭遇した。ベンドリンガーは、ヘルメットが水が入った衝撃吸収バリアに当たって昏睡状態に陥り、現役引退を迫られることになったが、そのアクシデントの後のFIAの対応は極めて迅速だった。
◆現在のマシンは、横からみると、ヘルメットが完全に見えていた。横からのプロテクトがなかったのだが、この事故をきっかけに、ドライバーの両側の壁が撥ね上げられ、ヘルメットが半分隠れる形が義務づけられた。当時、そのプロテクター部分が不格好で不評だったが、むしろ、不評なくらいの見え方によって、FIAは安全を確保したというアピールができた、と考えられた。要するに、マイナスイメージの意見を出さない気づかい。HALOにも、似たようなものを感じる。
◆FIA、つまり国際自動車連盟とは微妙な距離を置くアメリカのインディカーでは、HALOを採用していない。彼らには別の考え方があるからだ。
◆さて、日本のスーパーフォーミュラである。F1の中心地であるヨーロッパとも、アメリカとも、モーターレーシングのポジションが異なる状況の中で、HALOの扱いがどうなるか、今後の行方が注目される。
[STINGER]大和 空/Sora Yamato