ザック・ブラウンの商才
マクラーレンF1チームの代表を務めるザック・ブラウンは、ビジネスで成功を納め、その勢いを駆ってマクラーレンの運営に乗り出した。ビジネスもF1チームの運営も、同じような感覚で成功に導ける、と思いたいところだ。
しかし、ビジネスといっても、ブラウンが実績を積んできたのは、代理店としての手腕であって、モノ作りに長けていたわけでも、ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバークのように新しいアイデアがあったわけでもない。
ウィリアムズにマルティニのスポンサーを呼び戻して流石と思わせたが、その後のフォローができないままで、今年一杯でマルティニは手を引くことになり、自らのマクラーレンには、未だに冠スポンサーが付いていない。
さらに驚いたのは、ケッタッキーのステッカーが着いたことだった。それも、グローバルなポジションのケンタッキーではなく、インドネシアのローカルだった。アロンソが経営に乗り出しているファッションブランドの“KIMOA”もしかり。アロンソへのサービスにはなっても、少なくともこれまでに築き上げたマクラーレンのイメージ戦略からは外れている。
やや乱暴な区分けだが、スポンサーのランクをみると、F1と、フォーミュラE、インディカー、ナスカーなどに違いが存在する。
例えば、F1は、世界的に活動する企業がスポンサーになっている。特に、ロン・デニス時代のマクラーレンは、グローバル企業だけがスポンサー候補であり、マクラーレンではスポンサーと呼ばずにパートナーとリスペクトを含んで呼んでいた。エクソン・モービル、ヒューゴBOSS、日本のヤマザキ・マザックやKENWOODなどは、すべてグローバル企業だ。
これに対して例えばナスカーは、洗剤やビール、スーパーマーケットなど、大衆消費材の企業がスポンサーになる。それは対象が一般ユーザーだからだ。KIMOAもそのグループだが、ザック・ブラウンの感覚は、この二つがごちゃ混ぜになっている。
時代が変わった、という見方もあるが、アメリカンスタイルのブラウン代表の考え方がF1に通用しないことが、時間の経過と共に証明されている。
さらに、来年に向けて、ブラウン代表は難題を抱えている。2019年に必ずF1に乗せる、という条件でランド・ノリスの父親から資金を調達したが、その約束を守れるかどうか、崖っぷち。休み明けに、猛暑の8月に冷や汗をかいて、少し痩せた姿にお目にかかれるかもしれない。
[STINGER]大和 空/Sora Yamato
photo by McLaren