芋づる式のF1プールリーグ!!
シーズンオフの冬の間に交渉が展開されることから、スートブリーグと呼ばれるF1ドライバーの移籍話は、すでに30年ほど前から真夏の“イベント”として、プールリーグと呼ばれるようになった。今年もまさにプールサイドで大きな動きが起きている。
ダニエル・リカルドがレッドブルからルノーに乗り換え、フェルナンド・アロンソが2019年を走らないことを表明し、マクラーレンのシートにはカルロス・サインツが座ることになった。あとは、フェラーリが決まれば、主要なシートは埋まる。
セバスチャン・フェッテルのチームメイトは、シャルル・ルクレールで決まり、という説が根強かったが、F1公式ポットキャストの『Beyond The Grid』で、1997年ワールドチャンピオンのジャック・ヴィルヌーブが、「フェラーリはライコネンが必要だ」、とコメントし、別の流れが見え始めている。
ヴィルヌーブは、2年後を考えてみろ、と言っている。フェラーリというチームは、“育成の母体ではない”とも。ルクレールは確かに才能あふれる逸材だが、経験を照らし合わせると、キミ・ライコネンのポテンシャルには届かない。それがフェッテルにとって、どう影響するか。フェッテルは、ライコネンというライバルがいたおかげで力を出し切れている、と考えると、若いルクレールは、ライコネンの役目にはまだまだ届かず、もう1年修行が必要。となると、フェラーリはライコネン継投の可能性が高くなる。
そうなった場合、ルクレールはザウバーから動かず、ストフェル・ヴァンドーンとのコンビになるけれど、それはそれで、二人の能力が比較できて面白いが、ザウバーはフェラーリ・エンジンを使っていることからフェラーリの影響が色濃く出ているが、それはハースも同じだ。
ハースは、2016年のデビューから光るチームとして注目されている。ケビン・マグヌッセンは安定したポテンシャルを見せてハンガリーGPまでの12戦中9回の入賞と45ポイントをチームに計上してシリーズで8番手に着けているが、一方のロメイン・グロジャンは、入賞僅か3回と、速さをみせながら粗削りから脱していない。マグヌッセン+ハースは継続の可能性が高いが、グロジャンは揺らいでいる。
フェラーリつながりでシャルル・ルクレールがザウバーを離れてグロジャンと交代、の噂もあるが、ルクレールがハース入りとなると、当然、ルクレールの育成担当のフェラーリの力が入ることになって支援が強化され、ハースはダークホース以上の存在になりうるが、ハースにはセルジオ・ペレスも候補に挙がっている。
同じフェラーリ・ユーザーのザウバーは、ルクレールの残留、マーカス・エリクソンの継続の他に、フェラーリのサードドライバーであるアントニオ・ジオビナッツィがリストアップされているが、噂の中にはキミ・ライコネンの名前も見える。確かに、フェラーリつながりであり、ザウバーで2001年にF1デビューを飾っていることから、話としては面白いが、実現性は高いとは言えないだろう。
フェラーリと共に、パワーユニットを供給するメルセデスの影響も、フォースインディアとウィリアムズに波及する。ウィリアムズの候補には、ハンガリーGP後のテストで最速タイムを記録したF2ポイントリーダーのジョージ・ラッセルの名前が、セルゲイ・シロトキン、クビサと共に顔を出している。
さらにメルセデス・ユーザーのマクラーレンは、アロンソの後釜として、メルセデスのバックアップを受けるエスティバン・オコン、マクラーレン育成のランド・ノリス、そしてストフェル・ヴァンドーンが候補だ。
気になるトロロッソ・ホンダは、ガスリーがレッドブルに昇格すれば、ブレンダン・ハートレーが残留、マクラーレンの育成ドライバーのランド・ノリスとのコンビになるか、もしくは、そのどちらかの代わりに、ダニエル・ティクトムが食い込む可能性もある。
8月19日現在、正式な契約が締結して決定しているのは8人のみ。エンジンメーカーの思惑、スポンサー獲得のチームの戦略など、ドライバーの能力以前のパワーゲームの真っ最中。まだまだ半数以上のシートが、水面下で交渉が続けられている。
[STINGER]山口正己