ライコネンの手負いのタイヤでグッドジョブ!!
2018F1GP第14戦イタリアGPは、激しい神経戦になった。主役は、全日の予選で見事なポールポジションを奪ってレースをリードしていたフェラーリのキミ・ライコネン。地元の絶大な声援の中で、トップを走っていたが、53周レースの23周目に、スーパーソフトから交換したソフトタイヤに、30周を越える頃か偏磨耗の兆候を示す黒い帯びが見え始めていた。いわゆるブリスターと呼ばれる危険信号だ。このまま使い続けると、タイヤ表面の剥離や、酷い時にはバーストの可能性がある。高速コースのモンツァでは、リスキーな状況だった。
そうなった理由は、いくつ考えられたが、最大の原因は、メルセデスの“作戦”だった。タイヤを交換したライコネンは、宿敵メルセデスのバルテリ・ボッタスの後ろでコースに戻り、ボッタスには、ピットから、「ライコネンを前に出すな」という指令が飛んでいた。ライコネンのチームメイトであるルイス・ハミルトンの闘いを有利にするためのチームオーダー。
ボッタスは忠実に指令に従い、ライコネンの後方にハミルトンが近づいて来たのは、53周レースの33周目。37周目にボッタスがタイヤを求めてピットインしてライコネンの前は開いたが、背後にハミルトンが貼りついたままの状態でライコネンは逃げた。ハミルトンも、1コーナーでタイヤをフロントロックさせたことで、完璧な状態ではなかったが、張りつめた空気がモンツァを包んだ。
しかし、ハミルトンには余力があった。手負いのタイヤで逃げるライコネンのリヤタイヤのブリスターを後方から確認していたはずのハミルトンが、10周をの越した1コーナーで前に出た。スタンドのティフォージから悲鳴が上がった。
残り10周、ゴールまでタイヤが持つか心配するスタンドの前で、ゼッケン7の赤いフェラーリは、ハミルトンに遅れること8.7秒でゴール。ライコネンは、コクピットから降りると、「ファンの声援が助けになった」とスタンドに手を振った。
リヤタイヤはグリップを低下させ、高速パラボリカでテールが流れる危うい場面もあったが、2位を守ったライコネンに盛大な拍手が贈られた。
[STINGER]大和 空/Sora Yamato
photo by FERRARI