グリッド上のトロロッソ・ホンダのザワツキ
日本GPのスターティンググリッド上で、予選6番手と7番手につけていたトロロッソ・ホンダの2台の周辺がザワついていた。
通常、予選後は、車両保管場所に入って保管されているクルマに触れることはできない。スタートするまで、すべての変更ができないことになっているが、状況によっては(たとえば安全に関係する事柄など)、申請することで変更が可能になる。
ホンダは、予選後に走行データを確認したところ、シフトアップ後のエンジン回転数の暴れ(オシレーション)が大きい事象を発見、信頼性の観点からデータ変更での対応策を検討し、レース日の朝に、その対応を行なうために、内容説明と変更データを添えてFIAにセッティング変更の承認を申請した。
これに対してFIAから、追加情報やデータなどの要求があり、ホンダは対応の追加内容を提出、FIAから変更OKが出て、変更許可が降り、ホンダは修正を行なって一件落着のはずだった。
FIAから出されたのは、The following parts and parameters have been replaced / changed during the Parc Fermé yesterday and today:
と言う事で、
Scuderia Toro Rosso Honda:
Car 10: RHS tyre seal
RHS seal to RCS
Post shift ignition retard settings
だった。
ところが、レースのフォーメーションラップが終わったグリッドで、“この変更は認められない。聞いた話と異なる”、とFIAからホンダに通達が届いた。
ステアリングスイッチで旧データにも対応出来るようになっていることで、ホンダは、FIAの通達に従い旧データでレースをスタートすることになったが、ホンダは慌てて変更を戻す作業を強いられた。
以上が、スターティンググリッド上の流れだが、FIAから先の文書の訂正版は、レース後(今に至っても)発行されていないという。
◆トラブルの真相とパワーユニットのポテンシャル
不思議なのは、通常認められない変更を許可したことと、その認証を、スタートギリギリになって取り消したこと。そして、その変更通知が未だに届いていないこと。
FIAは、何を思ってギリギリに変更の取り消しを伝えたのか。そしてFIAのいう“聞いた話と異なる”とは、何を指していたのだろうか。
田辺豊治テクニカルディレクターは、「この変更はラップタイムに影響があったわけではなく、変更しなくても成績が上がったとは思えない。まだまだ総合力が足らないことの結果です」とコメントしたが、釈然としないものが残る事件だった。
ところで、ロシアでは、2台のマシンが同じブレーキトラブルでリタイアしている。今どき、安全に最も影響が大きいブレーキが2台同時に壊れることは考えにくい。もしかすると、パワーが上がったパワーユニットの例えば回生システムに何らかの不具合が出て、その影響が他にも広がっていることも考えられる。回生システムは、ブレーキに直結している。
振動の問題も、パワーユニットの進化に付随して現れる、と考えると、不具合は、進化の証と取れるのかもしれないが、いずれにしても、ホンダのパワーユニットが、“矢面”に上がるポジションに来たことを思わせる事件が起きたと解釈して、今後のトロロッソ・ホンダの躍進を期待しておきたい。
[STINGER]山口正己
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